2000 Fiscal Year Annual Research Report
看護基礎教育における死に関する教育プログラムの開発
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11771536
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Research Institution | Japanese Red Cross College of Nursing |
Principal Investigator |
吉田 みつ子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 講師 (80308288)
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Keywords | 看護教育 / 死生観 / パリアティブ・ケア / ホスピスケア |
Research Abstract |
本年度は看護基礎教育における生と死に関する教育内容の検討のために、下記の調査を実施した。 1)N看護大学生5名へのヒアリング調査より 学生が生や死について考える契機となった授業には「生命倫理(必須科目)」「パリアティブ・ケア(選択科目)」があった。教材や授業方法としては、死に直面している人々の生き様を題材としたVTR教材や実際に遺族の体験談を聞いての話し合い、遺書の作成、ロールプレイが良かったと感じていた。実習では闘病している患者とその家族の姿を通して、遠い未知なものであった死が現実のものであることを実感していた。 2)国内外の看護教育、死生学関連の専門家へのヒアリング調査より Q大学看護学部(英国)では、3・4年次における選択科目として、「死の過程における感情と行動」「ホスピス及びパリアティブケアの原則と発展」「パリアティブケアにおけるぺインマネージメント」があり、大学教員のみならずホスピスの看護教育担当者による講義、施設見学が行われている点が特徴的であった。J短期大学看護学科・J大学医学部(台湾)では、仏教を基盤に、人間尊重が徹底されている。例えば、解剖学実習では学生は献体者を「先生」と呼び、氏名、経歴等を含め献体者の顔写真が掲げられ、火葬後の骨恰い、遺族との懇談までを一貫して関わる方法が取られている。T大学文学部(東京)は、宗教学を専門とする専門家による「生死観の比較研究」3年次を対象に、死生観とその文化的意味論、宗教・習俗との関わり、日本人の死生観とその変容、生命倫理等に関する内容を含んでいた。文学部という特性上、非常に観念的概念的な理解を主としていた。I女子短期大学看護学科(長野)は大学全体が浄土真宗を基盤としており、「仏教看護論」『ビハーラケア論」の科目がおかれ、それらが人間の誕生前から死後までのいのちの生老病死のすべてにかかわることを視野にいれ展開されている。死亡から納棺、葬儀までを実際に体験する授業、金魚とのふれあいを通じたいのちの実感を学ぶ授業等、ユニークな体験型の学習が特徴的であった。以上及び諸文献の検討を踏まえ、看護基礎教育においては、(1)生死の意味や定義、死生観とその文化的意味、悲嘆等に関する基礎的(概念的)事項、(2)(1)を踏まえた生命倫理(安楽死、尊厳死、中絶、出生前診断、遺伝子治療等)に関連する応用的事項、(3)ホスピスケア、パリアティブケアに関する臨床的事項の内容を含み、問題の所在を明らかにするための講義、VTR等の視聴、生や死を自分のこととして考え、実感するきっかけとなるような体験学習を有機的に組合せていくことが効果的であると考えられた。
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