1999 Fiscal Year Annual Research Report
体育雑誌に見る大正自由教育の影響について-大正後期から昭和初期を中心として-
Project/Area Number |
11780021
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鈴木 明哲 岡山大学, 教育学部, 講師 (70252947)
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Keywords | 大正自由教育 / 体育雑誌 / 大正後期 / 昭和初期 |
Research Abstract |
大正後期から昭和初期における学校体育の歴史的展開の中に大正自由教育の理論と実践がいかなる影響を及ぼしていたのか、このことを実証的に明らかにするための基礎的史料を得ることを目的として当時の体育雑誌を収集し、検討した。特に今年度は当時の体育関係者の間で広く購読されていた『體育と競技』、『學校體育』、『國民體育』、『真体育』、『女子と子供の体育』の5誌を収集し、検討対象とした。分析の視点は第一に大正自由教育の代表的イデオローグがどれだけ寄稿しているのか、第二に体育関係者による大正自由教育を擁護する論考が見受けられるか、という点においた。 分析の結果、『體育と競技』、『真体育』、『女子と子供の体育』の3誌には大正自由教育の代表的イデオローグの論考は全く見られなかった。大正自由教育を擁護するような論考もまた見られなかった。僅かに『體育と競技』誌上において東京高師附小訓導の齋藤薫雄が大正自由教育の代表的実践校であった奈良女高師附小の体育に注目していた事実が把握できたに過ぎない。それに比して『學校體育』、『國民體育』の2誌には大正自由教育の代表的イデオローグの論考が頻繁に見受けられた。また『國民體育』誌上においては主筆である横浜高等工業学校の飯塚晶山が再三にわたり大正自由教育を擁護する論考を発表していた。 以上のように大正後期から昭和初期における体育雑誌の間には、大正自由教育のとりあげ方、接近の度合いにおいて大きな雑誌間格差が存在していた。『體育と競技』、『女子と子供の体育』など、東京高師系とも言うべき雑誌には大正自由教育への傾倒が薄く、逆に『學校體育』、『國民體育』など、日本體育学会系の雑誌はその関係が密であったことが実証された。 次年度は残された2誌『日本體育』と『小学校体育』の収集と分析を行い、加えて大正自由教育を擁護していたと見られる飯塚晶山の体育論について詳細に分析したいと考えている。
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