Research Abstract |
本研究では,中高年以降における運動でも,大動脈伸展性低下の進行を抑制ないし改善できるという仮説を検証するため,女性中高年者を対象に,低強度の継続的運動トレーニングが大動脈伸展性に及ぼす効果について検討した。対象は,53 68歳の女性12名(61.6±5.8歳,Mean±SD)で,健常者群6名,動脈硬化性疾患者(以下,有疾患者群)6名(高血圧症:4名,高脂血症:1名,脳梗塞:1名)であった。対象者には体力に応じて負荷を与えて,自転車エルゴメーターを用いた持久性運動,ダンベルおよびユニバーサルマシーンを用いた抵抗性運動,ボールゲームおよびステップエクササイズを1回約90分間,週2回の頻度で3年間継続させた。その結果,最大酸素摂取量は,健常者群でトレーニング開始1年後,有疾患者群で1年半後有意に増大し,その増大は,運動トレーニングの継続と共に維持された。また,大動脈脈波速度指数は,運動トレーニング開始6ケ月後から低下傾向を示し,両群とも最大酸素摂取量がトレーニング前の測定値よりも有意な増大を示した時期(健常者群:1年後,有疾患者群:1年6ケ月後)から有意となり,トレーニングの継続により低値のまま維持されていた。また,同様に,収縮期血圧も大動脈脈波速度指数の低下とともに低下し,低値を維持していた。本研究では週2回,月間8回の運動トレーニングを設定したが,実際に今回の対象者が実施した回数を1ケ月当たりで換算すると,健常者群,有疾患者群とも実施回数が設定回数を大きく下回っていたにもかかわらず,両群とも大動脈伸展性に有意な効果が得られた。今回の対象者が行った運動トレーニングは,持久性運動と抵抗性運動を合わせたトレーニングではあるが,高齢者向けの低強度であり,実施回数も平均すると月に3回程度の低頻度であった。しかし,実施回数は少なくても,今回行った運動教室参加が契機となって日常の活動量が増加した可能性も否定できないため,今後は,運動トレーニング以外における身体活動量を適確に評価し,得られた効果との関係について明確にする必要がある。
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