1999 Fiscal Year Annual Research Report
信仰受容の重層性からみた信仰圏の地域構造に関する研究
Project/Area Number |
11780061
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松井 圭介 筑波大学, 地球科学系, 講師 (60302353)
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Keywords | 信仰圏 / 金村別雷神社 / 那珂湊天満宮 / 天理教 / 講 / 個人崇敬者 / 祭礼組織 / 自治組織 |
Research Abstract |
平成11年度は,金村別雷神社(茨城県つくば市)と天理教団(奈良県天理市),那珂湊天満宮(茨城県ひたちなか市)を事例とし,その信仰圏の動態を明らかにする方向で調査を進めた。まず日本における宗教地理学の1990年代における研究動向を整理し,信仰圏研究の位置づけを検討した。 続いて,つくば市とひたちなか市における信仰受容の実態調査を実施し,雑誌論文として成果を発表した。金村別雷神社の事例調査においては,金村信仰が受容された地域を講および個人崇敬者の分布から抽出し,信仰圏各圏域の空間的特性を検討した。その結果,既往の研究において解明されてきた山岳信仰における事例との類似性が指摘されたとともに、第三次信仰圏が画定されないといった雷神信仰に基づく金村信仰の特殊性も明らかとなった。 那珂湊天満宮の事例調査では,天満宮の祭礼である八朔祭に着目し,八朔祭の担い手である氏子会・青年会組織の空間的範囲や参加主体,組織構成,活動内容に関するデータを収集した。その結果,氏子会が祭礼組織に留まらず,自治組織の代替的な機能を有してきたこと,青年会が祭礼の実務全般を担うことによって地域集団として実質的に機能していることが明らかとされた。さらには,青年会の活動を通して八朔祭に参加することによって,那珂湊という地域アイデンティティが確立されることがわかった。 天理教の事例調査からは,天理教系教団の分派成立に関する予察的な報告を得た。近代日本の農村社会に広く信仰が受容された天理教の場合,生神教祖のもつ教祖カリスマに信仰の源泉が求められるが,教祖の死後,教団は大きな変容を迫られることとなった。研究代表者はその大きな変容の焦点として,「場所の宗教化」をあげた。しかし聖地に救いの源泉を求める場所の宗教化は,天理教のもっていた宗教的志向性のすべてを汲み尽くすことはできず,そこから分派教団が成立したものと推測した。
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[Publications] MATSUI, Keisuke: "A study on the religious sphere of the Kanamura Betsurai Shrine, Ibaraki"Ann.Rep., Inst.Geosci.,Univ. Tsukuba. 25(印刷中). (1999)
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[Publications] 松井 圭介: "カリスマの継承からみた天理教系教団の分派形成 ―場所の宗教と天啓者の宗教―"人文地理学研究. 24(印刷中). (2000)
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[Publications] 松井圭介、岩間信之、兼子 純、栗島英明、佐々木 緑: "ひたちなか市における地域集団の存立基盤"地域調査報告. 22(印刷中). (2000)