1999 Fiscal Year Annual Research Report
近代移行期における商家の同族的経営展開からみた地方都市の変容
Project/Area Number |
11780071
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
河野 敬一 常磐大学, 人間科学部, 講師 (70211894)
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Keywords | 地方都市 / 近代移行期 / 商家同族団 / 長野県小諸市 / 近代歴史地理学 |
Research Abstract |
地方中心都市の近代移行期の変容過程と、商家の同族的展開との連関を明らかにするために、平成11年度は、長野県小諸市に本家商店を置く「柳田茂十郎商店」を主たる事例とし、明治期以降の暖簾分けによる別家輩出過程や、同族的支配の実験を把握するための資料調査を行った。具体的には、小諸本店のほか、諏訪市、松本市などに展開した別家商店の経営資料の閲覧・収集を行い、本家-分家関係の変化を経営の側面から考察した。また、昭和戦前期に結成され、現在も継続して活動している「柳田会」、「柳思会」という同族会にオブザーバーとして参加し、現状を把握するとともに、同族会活動の変化を、会の記録資料と聞き取り調査によって明らかにした。これらの記録資料収集や聞き取り調査は、来年度前半も継続する必要があるが、これまでの収集資料によって、以下のようなことが推測された。小諸のような、江戸時代以来商業に卓越した地方都市の変化は、伝統的な商家の動向が重要性を持っていた。明治期以降も、商家は別家展開など同族的な経営を続けたが、同族団が巨大化する一方、昭和初期頃には交通・流通体系が大きく変化し、地方都市の結節点としての機能が低下するとともに、本家としての地位も低下し同族団の紐帯が弱まった。このように、マクロスケールでの地方都市の機能の変化と、商家同族団の変容は密接にリンクしていることが推測される。別の角度から見れば、地方都市の近代的インパクトが、伝統的な商家同族団というフィルターを通して、地域変容に反映されていると考えることもできよう。 これらの成果は、途中経過を日本地理学会研究グループにおいて報告し(「近代都市への地理学的視点-地方都市の変容と商家の同族的展開との連関-」/於・富山大学)、討議を経た。また現在執筆中の博士学位請求論文(仮題:近代移行期における地方商業都市の変容)の主要な構成要素として公表する予定である。
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