1999 Fiscal Year Annual Research Report
山地流域の水循環および水質形成過程に果たす谷底地下水域の役割に関する研究
Project/Area Number |
11780074
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
辻村 真貴 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (10273301)
|
Keywords | 山地流域 / 谷底地下水域 / 水循環 / 水質形成 / 地中水 / 土壌水 / 斜面 / 安定同位体 |
Research Abstract |
近年,源流域の水循環および水質形成過程において,とくに谷底地下水域における地中水の流動過程とそれに伴う水質変化過程がきわめて重要であることが示唆されている.しかしながら,谷底地下水域における地中水の流動過程と水質変化過程を,詳細に明らかにした研究例は少ない.そこで本研究では,急峻な斜面と明瞭な谷底地下水域とを有する丘陵地源流域を対象として,詳細な水文観測および水サンプリング・化学分析を実施することにより,源流域における水循環および水質形成過程における谷底地下水域の役割を明らかにし,さらに源流域の水循環過程に関する一般則を得ることを最終目標とした. 本年度は対象流域において,河川水位および流量の連続観測を行い,基本的な河川の流出特性を明らかにした.併せて流域内の複数箇所において,土層貫入試験および土壌サンプリングを実施し,土層厚の空間分布および土壌の物理特性を詳細に明らかにした.さらに,斜面尾根部から谷底に至る測線を,流域の横断方向および縦断方向の2本設定し,この測線に沿って地中水の流動に関する観測および地中水のサンプリングを実施した.得られた水サンプルはすべて実験室に持ち帰り,各種無機溶存イオンおよび水素・酸素安定同位体比の分析を行った.この結果,準備段階を含めて約1年間にわたる基礎的な水文・水質データが得られた. 対象流域においては,降雨に対する渓流の応答がきわめて速やかである傾向が認められた.また豪雨時において,渓流水の塩素イオン濃度がきわめて顕著に降雨によって希釈されるという結果が得られた.また豪雨時においては,斜面脚部の表層地中水中の塩素イオン濃度が,きわめて低い値をとる傾向がみられ,さらに斜面脚部の表層地中水が完全に飽和し直接渓流に流出するというデータが得られた.以上のデータは,豪雨時において谷底地下水域に降った降水成分は,いわゆる地下水成分とはほとんど混合しない状態で渓流に流出していることを示唆している.来年度さらに観測を継続することによって,より一般的な結論を得ることが可能になろう.
|