1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11780096
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
阿久澤 さゆり 東京農業大学, 応用生物科学部, 講師 (60256641)
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Keywords | 湿熱処理 / 小麦粉 / 澱粉 / 走査顕微鏡観察 / 糊化特性 / 動的粘弾性 / ゾルーゲル転移 / スケーリング指数 |
Research Abstract |
湿熱処理を小麦粉に施し、澱粉とタンパク質の構造変化とペーストの物理的な変化を検討し以下の結果を得た。 1.湿熱処理による理化学的性質の変化 オーション及びバイオレットを試料とした。小麦粉の顕微鏡観察では、湿熱処理により粒子は中央に窪みのある偏平状で、タンパク質が粒の表面全体をコーティングするように付着している様子が明確に観察された。湿熱処理によりタンパク質含量は変化せず、数種のタンパク質分解酵素による分解過程(低温高速遠心分離・今回申請備品)を経時的に測定した結果、湿熱処理の分解率が低くアミノ酸(アミノ酸アナライザー・学内現有設備)も変化した。ラピッド・ビスコアナライザー(現有設備)及び示差走査熱量計(現有施設)による熱的性質より、粘度立ち上がり温度の上昇、粒の膨潤及び粘度変化の抑制の向上が示唆された。今後も継続して澱粉の分子構造及びタンパク質の立体構造を検討する。 2.ゲル形成に及ぼす湿熱処理の影響 ロトビスコ回転粘度計(現有設備)による粘性特性では、湿熱処理によりチキソトロピー特性値が著しく増加し、ずり変形で破壊されやすい弱いゲル構造と考えられた。ペーストの見かけの活性化エネルギーは、湿熱処理の方が低値であり温度依存性が小さいことが示唆された。小麦粉から澱粉を分離し、ゲル形成能について動的粘弾性(現有設備)を用いて検討した結果、湿熱処理によりゾルーゲル転移点濃度が増加し、得られた貯蔵弾性率(G')の温度依存性のデータにパーコレーション理論のスケーリング則を適用し、算出したスケーリング指数は、未処理3.1、湿熱処理2.2であった。このスケーリング指数から、湿熱処理澱粉糊液の方が緩やかなゲル構造であると考えられた。以上の結果から、湿熱処理により澱粉粒内の分子特性が変化したことから、澱粉粒の膨潤の抑制及び耐熱性が増し、その澱粉が水と熱によって糊化した分散系である糊液の物性も異なり、それは、未処理に比べて緩やかな網目構造を形成していると考えられ、今後、加工適正の検討を行う。
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Research Products
(1 results)