Research Abstract |
本研究では、縄文時代における沖縄地方のイノシシが前後の時代に比べて大きかったのかを検証し、台湾や本州のイノシシと比較する事によって,時代ごと地域ごとの形態的な特徴を明らかにするのが目的である。 今年度は過去に調査した頭骨の計測値(Driesch,1976に従い頭蓋骨45項目,下顎骨21項目を計測した)のデータを元に新たなデータを加え,琉球列島を中心に各地の現生イノシシの形態を比較した。欠損のあるものを含めると約100個体の頭骨を計測・観察した。今回は最も数多かった成獣の雄についてのみ,分析を行った。地域は本州,九州,奄美大島,徳之島,沖縄島,石垣島,西表島,台湾の8つに区分した。頭蓋骨の計測値から,8地域の標準誤差を求め,平均値の95%信頼区間が重ならない2地域の平均値には差があるとした。 この方法でニホンイノシシとリュウキュウイノシシを区別するのに有効な計測部位は,Driesch(1976)の部位番号で15a,18,19,25,27a,28,31,33,43,44であることがわかった。全体に平均値の大きい方から本州→九州=台湾→石垣島→徳之島→奄美大島=沖縄島→西表島という序列が多い。 形態は今泉(1973)が指摘した下顎枝後縁,下顎角,聴胞(岩様部骨胞)の他,後頭鱗と大孔周辺,口蓋裂とその周辺および涙骨の形状に着目した。後頭鱗と大孔周辺の形態は地域ごとに異なるが,それ以外の特徴を大まかにニホンイノシシ・タイプ(L)とりュウキュウイノシシ・タイプ(R)に分けると,(1)すべてLタイプの本州・九州産(台湾産),(2)すべてRタイプの奄美大島・徳之島・沖縄島産,(3)口蓋裂と涙骨がLタイプであとはRタイプの西表島産,(4)下顎骨はRタイプで他はLタイプの石垣島産,となった。
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