1999 Fiscal Year Annual Research Report
美的感受性の発達における思春期の類型的特性と美術鑑賞学習の適時性に関する研究
Project/Area Number |
11780139
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
石崎 和宏 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (80250869)
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Keywords | 美的感受性 / 美術鑑賞 / 思春期前期の発達 |
Research Abstract |
本研究は、視覚美術に対する美的感受性の発達において、その思春期の多元的な現象を類型的な特質に着目して分析し、さらにその発達的知見から思春期の美術鑑賞学習の適時性を検証することを目的としている。本年度は、特に日本の青少年の思春期前期にみられる多元的な特徴の様相を明確化し、その特徴とParsonsの知見とを比較考察した。 その結果、台湾のデータとの比較から、日本の思春期前期の特徴として、DP2への傾斜型群、DP4への傾斜型群、DP2とDP4の複合型群という3つの群が、台湾や日本の他の学年に比べて多く混在していることを指摘した。さらに、日本の思春期前期における造形要素に対する関心の高まりを、Parsonsの理論に基づいて数量化した各DP値の分布状況や各トピックヘの関心の比率から、多元的な発達構造として量的に明らかにした。ただし、造形要素に対する関心は、鑑賞共同体の概念にまで展開したものではなく、DP4に顕在化した特性とParsonsの規定する第4段階の特性とには差異があった。 一方、Parsonsの知見では第3段階の特性は生得要因が強いとされるが、それがまだ現れない時期に、日本の事例では造形要素に対する関心、つまり制作経験やそれに伴う指導などの環境要因を必要とする特性があることを指摘した。このことは、Parsonsの示す発達段階論における第2段階から第4段階にいたる過程の順序性を支持するものでなく、今後の検討課題を提起した。つまり、Housenが示す「分類の段階」のように独立した段階設定が妥当なのか、あるいは、Parsonsの示す発達段階において表現のトピックのみ第2段階から第3段階への移行期が設定されているが、形式・媒体、スタイルのトピックについても同様の移行期を設定することで解決されるものなのかを検証する必要があり、これらの問題は本研究の今後の課題である。
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Research Products
(1 results)