1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11780252
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 一博 東京大学, 大学院・総合文化研究科広域科学専攻, 助教授 (60262101)
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Keywords | 洞察 / 帰納推論 / 仮説形成 / 問題解決 / 協同(コラボレーション) |
Research Abstract |
始めは解けなかった問題が突然の閃きによって解ける,という経験は誰しも持っていようが,この「閃き」のことを心理学では洞察(insight)と呼ぶ.本研究の目的は,この洞察という現象がどのように生じるのか,また洞察をもたらす要因とは何かを,帰納的な問題解決を例にとり,認知心理実験に基づき解明することにある.具体的には,二種類の図形と様々な数字の組み合わせにおいてある種の優劣を決める簡単なルールを実験者が想定し,被験者はルールの正例30を一つずつ見ながら,実験者が想定したルールに関する仮説を形成し,最終的にそのルールを当てることが求められる.被験者を,この課題に一人で取り組む群(10人),同じく一人で取り組むが予想する回答を毎回二つ以上挙げてもらう群(10人)、二人で取り組む群(10グループ)、の三群にランダムに割り当てた.各被験者(グループ)から採取したデータは,各例を見たときに立てた仮説とその確信度,発話内容,回答時間である.最終的な回答(仮説)を正解ルールに対する近さと表現の簡潔性の観点から得点化したが,各群の平均得点における有意差は認められなかった.それとは対照的に,各群の平均回答時間に関しては,二人で取り組む群の方が一人で取り組む群のいずれよりも回答時間が有意に短いという結果を得た.平均得点における群間の有意差が認められず,ほとんどの被験者が正しい仮説を形成していたので,課題が易し過ぎたのかも知れない.しかし,従来のコラボレーション研究では,単独で解く場合と比較してグループで解く場合には,回答パフォーマンスは上がるものの時間は余計にかかる場合が多く,本研究の結果はそれとは対照的だという点で興味深い.
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