1999 Fiscal Year Annual Research Report
イオンビーム照射下陽電子ビーム測定装置を用いたカスケード損傷構造の研究
Project/Area Number |
11780370
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩井 岳夫 東京大学, 原子力研究センター, 助手 (30272529)
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Keywords | 陽電子ビーム / カスケード損傷 / イオンビーム / 鉄 / 空孔集合体 |
Research Abstract |
原子力エネルギー用材料が必ず直面する大きな問題は、高エネルギー中性子照射による照射損傷である。照射損傷は根源的にはいわゆるはじき出しの連鎖(カスケード損傷)に起因する。カスケード損傷過程は時間的にはピコ秒のオーダーで、空間的には原子レベルで起こる現象であるので、実験的にその構造を調べることは困難であり、主として分子動力学法などの計算機シミュレーションによる解明が続けられてきた。最近の計算機技術の進歩により、衝突の連鎖から冷却過程までの全貌が見えるようになりつつあるが、実験的な裏付けが決定的に不足しており、カスケード損傷構造を特徴づけるようなパラメータを導出する実験が求められるようになっている。陽電子消滅法は固定材料中の原子レベルの空孔型欠陥を極めて高感度に検出できるという特色があり、上記のような格子欠陥の研究に有用である。本研究では、世界でも例のない「イオンビーム照射下陽電子ビーム測定装置」を製作し、鉄などの金属材料のカスケード損傷構造を解明することを目的とする。 11年度はまず陽電子ビームによる欠陥データ取得のための各種調整を行った。内容は(1)陽電子モデレータ変更によるよう電子ビーム透過効率の向上、(2)イオン・陽電子量ビームの軸合わせ、(3)スペクトロスコピーアンプ更新などによる検出器系の分解能向上、(4)透明石英板イオンビームモニターの整備などである。これらの実施により、室温でのイオンビーム照射下陽電子ビーム測定が可能になった。試料としては純鉄を用い、生成する空孔集合体サイズに及ぼす(1)照射イオン種の効果、(2)照射量依存性に関する実験を室温で実施した。その結果、照射イオンの質量が大きくなると生成する空孔集合体のサイズが大きくなり、dpaあたりの欠陥生成率が高くなることが示唆された。また、この温度では空孔集合体が安定に存在するため、照射下と照射後で欠陥に大きな変化は見られなかった。
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[Publications] Takeo Iwai,Naoto Sekimura and F.A.Garner: "Effects of helium on void swelling behavior of vanadium alloys using dual ion beam irradiation"Effects of Radiation on Materials:18^<th> International Symposium ASTM STP. 1325. 1109-1118 (1999)
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[Publications] K.Asai,M.Koshimizu,T.Iwai,Y.Ito and H.Shibata: "Characterization of Langmuir Blodgett membrane using a slow positron beam"Radiation Physics and Chemistry. (印刷中). (2000)