1999 Fiscal Year Annual Research Report
多自然型工法による湖岸の環境改善が底生動物群集の多様性に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
11780387
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中里 亮治 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 助手 (30292410)
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Keywords | 湖沼 / 多自然型工法 / 底生動物群集 / 環境影響評価 |
Research Abstract |
離岸堤が新たに建設された北浦の水原地区において,多自然型工法による湖岸の環境改善が底生動物群集の多様性に及ぼす影響について明らかにするために,人工渚の離岸堤(柵)の内側(ヨシ帯の前とヨシ帯がないところ)と離岸堤(柵)の外側,および対照区として人工渚の近傍など,環境条件の異なる複数の場所を調査定点とし,種組成および個体数の季節変化を追跡した.その結果,11カ所の調査定点から,合計22分類群の底生動物が採集された.イトミミズ科とユスリカ科のヒラアシユスリカ属とオオユスリカが全地点で確認された.沖帯定点と沖帯と沿岸部のほぼ中間に相当する地点では,離岸堤近傍の沿岸部の地点より確認種類数が約50%ほど少なかった.また沿岸部に限れば,多自然型護岸が施工された定点で確認された種数は,非施工区(対照区)地点よりもほぼ同等かそれよりも多い傾向がみられた,沖帯では,種類数の大きな季節変動はみられなかった.沿岸部ではユスリカ種数の変動が激しかったが,離岸堤の近傍の対照区内の定点では,施工区定点に比べて大きな変動は示さなかった. 注目すべき点としては,離岸堤内側に作られた前浜(砂地)が,離岸堤の松杭の間から進入する波による侵食を受けた結果,削られた砂の大部分が離岸堤内のヨシ帯側に堆積し,施工から数カ月後には,以前の底質環境(植物残査の混じった軟泥からなる堆積物)が砂を多く含む堆積物に変化したことで,この地点では従来生息が確認されなかったクロユスリカ幼虫(この種は生息環境として砂質シルトを好む)が出現するようになったことである.このことは,多自然型護岸施工による急激な環境変化(前浜および離岸堤の施工)に加えて,これらの工事に伴う緩やかな周辺環境の変化(特に底質環境)が底生動物群集の種組成の変動に影響を与えることを示唆するものである.
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