2000 Fiscal Year Annual Research Report
多自然型工法による湖岸の環境改善が底生動物群集の多様性に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
11780387
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中里 亮治 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 助手 (30292410)
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Keywords | 湖沼 / 多自然型工法 / 底生動物群集 / 多様性 / 環境影響評価 |
Research Abstract |
離岸堤が新たに建設された北浦の水原地区において,多自然型工法による湖岸の環境改善が底生動物群集の多様性に及ぼす影響について明らかにするため,人工渚の離岸堤の内側や対照区とした人工渚の近傍など,環境条件の異なる複数の場所を調査定点とし,種組成および個体数の季節変化を昨年に引き続き追跡した.また今年度はヨシ上の付着性動物群集と,底生性および付着性動物群集の主要捕食者である魚類も調査対象に加えた.その結果,全定点においてユスリカ幼虫が個体数的・現存量的に最も主要な動物群となり,合計24分類群のユスリカ幼虫が採集された.採集期間を通じたユスリカの全出現種数は,多自然型護岸施工区の2定点では10種または12種が出現し,非施工区と同等かそれよりも多い傾向がみられた.また,施工区内の一部にあるヨシ帯では,そのヨシ上から15種の幼虫が見出された.魚類については,ヌマチチブやブルーギルなど合計11種が捕獲された.投網を用いた採集では,施工区内において捕獲した個体数および種類数は非施工区のそれらと比較して多かった.このことは人工渚の離岸堤が魚類にとっての新たな生息環境を提供していることを意味する.離岸堤施工区内での年間を通じた優占魚種はタイリクバラタナゴやヌマチチブであった.これらの魚はユスリカ幼虫を主要な食物資源としていたが,これらのユスリカ幼虫は複数種から構成されていた.これらのユスリカ幼虫の起源はヨシの茎上や根の際に営巣する種が主であったことから,水草帯が沿岸帯を生息場とする魚類の餌場として重要であることが示唆された.従って,離岸堤の施工という多自然型工法による北浦湖岸の環境改善は,底生物群集の多様度を高める方向に作用するだけでなく,返し波の影響で壊滅が危惧されている貴重な北浦水原地区のヨシ帯を保護する機能を有し,上位栄養段階の生物(特に魚類)の定着を促す役割を果たしていると結論された.
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