1999 Fiscal Year Annual Research Report
収束戦略による強活性海産天然毒シガトキシンの全合成研究
Project/Area Number |
11780409
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤原 憲秀 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20222268)
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Keywords | シガトキシン / 収束合成 / 天然物全合成 / 不斉エーテル構築 / 閉環メタセシス / アシルアニオン等価体 / シガテラ中毒 / 渦鞭毛藻産生海産毒 |
Research Abstract |
シガトキシンは、亜熱帯海域で年間2万人もの食中毒を引き起こし食品衛生上深刻な問題となっている魚毒シガテラの中心毒素として単離された、ポリエーテル化合物である。ドクウツボ830匹(約2トン)の内臓を合わせて0.35mgしか単離できない微量毒素であるが、その量で5000人以上を中毒させるほどの強力な活性を有する。その特異な梯子状の構造と強力な生物活性の相関という学問的観点と同時に、適切な治療薬の開発という社会的観点から詳細な研究が求められている化合物である。この様な背景から、本申請者はシガトキシンの全合成とアナローグの合成を目的に研究を開始した。 全合成上、適切なフラグメント設計とフラグメント間の連結法の確立が重要である。平成11年度は、連結法の開発に重点を置いて研究を行い、2つの方法を確立できた。一つは、環状エーテルセグメント同士をアルキン-トリフルオロメタンスルホン酸誘導体によるカップリング反応で連結し、生じた2置換アルテルをルテニウム触媒下酸化的に1,2-ジケトンに変換した後に、二環性アセタールを経由して縮環状エーテルを構築する方法である。わずか4段階で中央の2つのオキサン環を形成しつつ連結できるため、最も効率の良い方法であり、シガトキシンアナローグの合成上の有用性が期待できる。もう一つは、アシルアニオン等価体とアシル等価体のカップリング反応に基づくもので、7段階程度の工程数が必要であるものの、中央部が6員環-6員環、7員環-6員環の組み合わせのいずれの構造であっても効率合成が可能であり、汎用性に富んだ方法である。これによって、シガトキシンのABCD環部および、より官能基化されたIJKL環部に相当するモデル化合物の合成に成功している、今後、この方法のFGHI環部への適用可能性を検討し、さらにこれらの結果を踏まえ、シガトキシンの全合成を検討する予定である。
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[Publications] Kenshu Fujiwara: "A Simple Convergent Method for the Construction of Tri- and Tetracyclic Ethers"Synlett. No.7. 1037-1040 (1999)
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[Publications] Kenshu Fujiwara: "Four-Step Convergent Synthesis of trans-Fused Tetracyclic Oxane"Tetrahedron Lett.. 41・4. 507-508 (2000)