1999 Fiscal Year Annual Research Report
シアル酸の修飾による細胞接着活性調節機構の分子生物学的研究
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11780438
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
金森 審子 愛知県がんセンター, 病理学第二部, 研究員 (00261173)
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Keywords | セレクチン / 細胞接着 / シアル酸 / O-アセチル化 / 遺伝子単離 |
Research Abstract |
細胞接着分子セレクチンは、細胞表面上のシアリルLe^x,シアリルLe^a糖鎖を認識して結合することにより細胞接着を引き起こす。この細胞接着は、炎症やリンパ球のホーミング、悪性細胞の浸潤や転移に関与し、大きな生物学的意義を担っている。セレクチンとシアリルLe^x,シアリルLe^a糖鎖との結合は、糖鎖のシアル酸残基の修飾により多大な影響を受ける。大腸癌細胞表面に発現されるムチン分子上のシアリルLe^a,シアリルLe^x糖鎖のシアル酸残基のO-アセチル化の程度と悪性癌細胞の転移能が相関しているとの報告がある。他方、申請者の研究室では、シアル酸残基が分子内環状構造を形成する新規な構造(以下、サイクリックシアル酸と記す)が、ある種の白血球に発現されるシアリルLe^x系糖鎖に存在することを見い出した。サイクリックシアル酸を有する合成シアリルLe^xは、リコンビナントセレクチンと結合しない。本研究では、セレクチンによる細胞接着活性の調節機構の解明を、(1)シアル酸のO-アセチル化、(2)抗サイクリックシアル酸抗体認識構造の形成、の2点に着目して以下のように進めている。(1)申請者は、シアル酸のO-アセチル化を促進する因子、アセチルコエンザイムAのトランスポーターのcDNA(以後、AT-1と表す)をすでに単離している。大腸癌標本または培養細胞株における、AT-1遺伝子の発現量をRT-PCR法で、シアリルLe^a,シアリルLe^x糖鎖上のシアル酸残基のO-アセチル化の程度を免疫染色法で調べ、各症例及び細胞株の転移能との相関性を検討中である。(2)H-nmrスペクトル及びFAB-MAS解析により、抗サイクリックシアル酸抗体認識構造について、詳細な検討を進めている。シアル酸を含む分子内環状構造として予想されるラクトン構造とラクタム構造のうち、ラクタム構造であることを支持する結果を得ている。また、発現クローニング法により、抗サイクリックシアル酸抗体認識構造の形成を触媒する酵素の遺伝子を単離中である。単離した遺伝子を用いて細胞接着活性の調節を試みることを考えている。
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[Publications] Kimura, N., kanamori, A., Kannagi, R., et al.: "Reconstitution of functional L-selectin ligands on a cultured human endothelial cell line by co-transfection of α1->3 fucosyltransferase VII and newly cloned GlcNAcβ : 6-sulfotransferase cDNA"Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96. 4530-4535 (1999)
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[Publications] Mitsuoka, C., Kanamori, A., Kannagi, R., et al.: "Regulation of selectin binding activity by cyclization of sialic acid moiety of carbohydrate ligands on human leukocytes"Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96. 1597-1602 (1999)
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[Publications] Kannagi, R. & Kanamori, A.: "Glycobiology of sialyl 6-sulfo Lewis X, a new carbohydrate ligand for selectins"Trends Glycosci. Glycotechnol.. 11. 329-344 (1999)
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[Publications] Kannagi R., Kanamori A., Inoue Y., et al.: "In Sialobiology and Other Novel Forms of Glycosylation, Inoue, Y., Lee, Y. C. & Troy, F. A. (eds)"Gakushin Publisher. 37-43 (1999)