2000 Fiscal Year Annual Research Report
線虫における液胞型ATPaseの役割とクロライドイオンによる調節
Project/Area Number |
11780445
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡 敏彦 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (40263321)
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Keywords | 液胞型ATPase / クロライドイオン |
Research Abstract |
本年度の研究行なった。具体的には以下の示す。 1)新たな線虫V-ATPase遺伝子の同定 本研究では、V-ATPaseの作り出す多様な酸性環境の役割を明らかにするために、複数存在するV-ATPaseサブユニットのアイソフォームに着目し、アイソフォームが酸性環境の多様性にどう影響しているかを理解しようとしている。そのために、線虫でアイソフォーム遺伝子の欠損変異体の作成、解析を行い、その構築している酸性環境を同定することを目指している。そのために、線虫のデータベースより、V-ATPaseサブユニットaに似たESTクローンを検索し、4種類のクローンを同定した。ESTクローンと5'-RACE法で得られたPCR産物の塩基配列を決定し、全長のcDNAの配列を明らかにした。これかV-ATPaseサブユニットaイソフォーム遺伝子(vha-5,vha-6,vha-7,unc-32)は、それぞれ873,865,966,894アミノ酸残基より成るタンパク質をコードしていた。 2)線虫V-ATPase変異体の構築 平成12年度は、新らたに同定したV-ATPaseサブユニット遺伝子)の欠損変異体の構築を目指した。まず2本鎖RNA(dsRNA)を用いたRNA interference法により一時的にvha遺伝子の発現を遮断し、目的とする欠損変異体の表現型を解析した。vha-5遺伝子のdsRNAを成虫に導入することにより、その子孫が2令幼虫期で死滅したことから、vha-5遺伝子が線虫の3令幼虫への発生に重要な役割を担っていることが示唆された。また、vha-6やunc-32遺伝子のdsRNAを導入すると、1令幼虫や胚の段階で発生が押さえられ死滅することが分かった。vha-7遺伝子のdsRNA導入では子孫に何の変化も見られなかった。これら原因としては、それぞれの発生段階で特異的なサブユニット構成のV-ATPaseの活性が必要とされていることが推定される。現在は、これら遺伝子の機能欠損による致死の原因を分子レベルで検討中である。
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