1999 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞極性形成・維持におけるASIP-aPKCシステムの役割の研究
Project/Area Number |
11780518
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
鈴木 厚 横浜市立大学, 医学部・第二生化学教室, 講師 (00264606)
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Keywords | 上皮細胞 / 極性 / 細胞接着 / プロテインキナーゼC / 密着結合(タイトジャンクション) |
Research Abstract |
本研究計画初年度の今年は、「aPKCのキナーゼ活性欠失変異体(aPKCkn)が、イヌ腎尿細管上皮細胞由来の培養細胞、MDCK、において、細胞接着後に起こる密着結合形成(TJ)過程を優性抑制的に阻害する」というこれまでの知見をさらに詳細に解析することを中心として研究を進めた。その中で、以下の知見が新たに得られた。1)aPKCknの導入は、ZO-1の分布のみならず、TJの主要膜タンパク質、Occludin、およびClaudin-1の膜への局在を同様に阻害する。よって、TJ構造それ自身の形成を阻害すると考えられる。2)その結果としてこれらの細胞では、通常の上皮細胞で見られる頂端側と基底膜側での物質(イオン、および非電解質物質)の透過を抑制するバリア機能が壊れていること、3)さらに、TJによって維持されているといわれている頂端側と基底膜側での膜脂質の交換の抑制も大きく低下していることが明らかとなった。これらの事実は、aPKCが上皮細胞においてTJ形成に働くことを通じて、細胞極性の維持、形成に関与していることを示していた。4)一方、細胞骨格系との相互作用を通じて、TJの形成とは独立に側定側面に局在性を示すNa+、K+-ATPaseの分布もaPKCknの導入によって乱されることも明らかとなった。従って、aPKCは、TJの形成以外に、上皮細胞の極性形成に必須な細胞骨格系の再構成の過程にも関与している可能性も示唆された。この点は、5)aPKCknの導入によって、F-アクチンの凝集体をともなう異常なTJ構造が発生することからも支持された。現在、これらの新知見を論文化する作業を急いでいる。来年度は、現象レベルで明らかとなったこのaPKCの生理的機能の分子レベルの作用機序の解明に本格的に取り組む予定である。
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