1999 Fiscal Year Annual Research Report
^<31>P-NMRを用いたグルタミン酸受容体リン酸化部位の解明とその生理学的意義
Project/Area Number |
11780588
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平井 宏和 理化学研究所, 記憶学習機構研究チーム, 研究員 (70291086)
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Keywords | ^<31>P-NMR / グルタミン酸受容体 / フォスフォリルコリン / フォスファチジルコリン / ディアシルグリセロール / リン脂質代謝 / HEK / mGluR1 |
Research Abstract |
^<31>P-NMRスペクトロスコピーを用いると、放射性物質を用いることなく細胞内のリン化合物の動態を観察することが出来る。しかし、放射性物質を用いた場合に比べて感度が低いため、十分なS/Nを得るためには大量にサンプルを必要とする。これまで、^<31>P-NMRスペクトロスコピーを用いてグルタミン酸受容体のリン酸化をin vitroで同定することに成功しているが、さらに細胞内でのグルタミン酸受容体のリン酸化を^<31>P-NMRスペクトロスコピーで同定する実験を開始した。まず^<31>P-NMRスペクトロスコピーで十分なS/Nを得るために、恒常的に大量に代謝型(mGluR1)あるいはイオン透過型(GluR1)グルタミン酸受容体を発現しているヒト胎児由来腎細胞(HEK 293細胞)のクローンを作成した。まず最初に、グルタミン酸でこれらの受容体を刺激し、それに引き続く細胞内のリン脂質の変化を^<31>P-NMRスペクトロスコピーを用いて測定した。その結果、代謝型グルタミン酸受容体を活性化したときにのみ、細胞膜の主要成分であるフォスファチジルコリンの増加と、その構成成分であるフォスフォリルコリンの減少が認められた。この変化は、代謝型グルタミン酸受容体刺激によるディアシルグリセロール(DG)の増加が、DGとフォスフォリルコリンを基質としてフォスファチジルコリンを合成する経路(CDP pathway)を促進したためと考えられた。さらにこの変化に伴って、細胞突起の有意な伸長も認められた。これらの結果から、代謝型グルタミン酸受容体がリン脂質代謝を促進することにより細胞の成長に関与することが示唆された。
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