2000 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄後根神経節ニューロンの興奮性に対するIhブロッカーZD7288の作用
Project/Area Number |
11780595
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
八木 淳一 杏林大学, 医学部, 講師 (90265760)
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Keywords | 疼痛 / 脊髄後根神経節 / Ih / パッチクランプ法 / 自発放電 / ZD7288 |
Research Abstract |
体性感覚を司る脊髄後根神経節(DRG)ニューロンは、その軸索に損傷を受けると、損傷部あるいは細胞体を起源とする自発放電を生じる。この異常放電は、神経損傷による慢性疼痛(neuropathic pain)の原因の一つと考えられている。本研究では、DRGニューロンの自発放電の発生機序について、ペースメーカ電流と考えられている過分極誘発内向き電流(Ih)に着目した。実験には独自に開発した「ラットのDRG坐骨神経付着標本」を用い、DRGニューロンからWhole cell patch clamp記録を行った。初年度(11年度)は、DRGニューロンのIhについて以下の知見を得た。 1.Ihは、ほとんどのDRGニューロンに認められ、その電流密度は、Aα/β-typeのDRGニューロンで高く、Aδ-及びC-typeのDRGニューロンでは低い傾向にあった。 2.ゼネカ社で開発されたIhブロッカーZD7288は、DRGニューロンのIhを選択的に強く抑制した。 3.ZD7288によるIhの抑制は、DRGニューロンの興奮性を低下させた。 この結果を踏まえて、平成12年度は、神経損傷モデルラットに発現する自発放電に対し、ZD7288によるIh抑制が及ぼす作用を解析した。そして、ZD7288は、少なくともAα/β-typeのDRGニューロンで発生する自発放電の発火頻度を低下させる結果を得た。 以上から、IhはDRGニューロンの興奮性を高める作用があり、神経損傷後、自発放電が発生した場合には、そのスパイク放電を促進する働きがあるものと想定された。逆に、Ihの選択的ブロックは、自発放電を抑圧し、neuropathic painに対し鎮痛効果を及ぼす可能性が示唆された(J.Yagi et al.:Progress in Pain Research and Management Vol.16,2000)。
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Research Products
(1 results)