1999 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウスを用いた体性感覚野ヒゲ関連パターン形成の分子機構の研究
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11780606
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩里 琢治 理化学研究所, 行動遺伝学技術開発チーム, 研究員 (00311332)
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Keywords | 発達期可塑性 / 大脳皮質 / 体性感覚野 / 条件的遺伝子ノックアウト / Cre / lopシステム / NMDAレセプター / Emx1 / マウス発生工学 |
Research Abstract |
高等動物の脳の後期発達において外界からの刺激が重要な役割を持つ。マウスなどのげっ歯類の大脳皮質体性感覚野では、主要な体性感覚器であるひげの分布に応じた特徴的なニューロンのパターン(バレル構造)が生後1週間に形成される。このパターンの形成、修飾は外界からの刺激に依存する脳発達のモデルとして注目されている。バレル形成における、NMDA型グルタミン酸レセプター(NMDAレセプター)の関与については、永年議論されているがいまだ決着していない。最大の問題は適当な方法論が欠如していることである。本実験は、Cre/loxP組み換えシステムを応用し、この問題を解決するための新しい遺伝子ノックアウトシステム、すなわち大脳皮質特異的遺伝子ノックアウトシステムを構築することである。本年度の実績としては、1)大脳皮質特異的Emx1プロモーター領域の分離と制限酵素地図の作製、2)ターゲティングベクターの作製、3)ES細胞での相同組み換えを利用して、Emx1プロモーターの下流にCre組み換え酵素を組み込み、4)胞胚へのマイクロインジェクションによるマウスの作製、4)そのマウスにおけるCre依存的組み換えの特異性をレポーターマウスを用いて解析したことがある。その結果、胎性11.5日ですでに大脳皮質特異的に高頻度の組み換えが起きていること、また、生後7日の段階でも大脳皮質特異的な組み換えのパターンは維持されていることが確認できた。これらの結果は目的とするマウスの作製に成功したことを意味する。今後は、組み換えのパターンをより詳細に解析すると共に、このマウスを用いてNMDAレセプターを大脳皮質特異的にノックアウトする段階に移行する。また、さらにトランスジェニック技術をもちい、よりすぐれたマウスの開発をめざす。
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