1999 Fiscal Year Annual Research Report
ポリロタキサンの棒状構造により薬物の粘膜透過を促進する生分解性薬物運搬体の設計
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11780616
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
大谷 亨 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (10301201)
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Keywords | ポリロタキサン / 棒状構造 / 酵素分解 / 小腸粘膜 / 膜抵抗値 / 薬物透過 / タイト結合 |
Research Abstract |
本研究は、多数のα-シクロデキストリン(α-CD)の空洞部を貫通したポリエチレングリコール(PEG)の両末端に嵩高い生分解性基を導入したポリロタキサンの棒状構造を利用して、薬物透過の障壁となっている種々の粘膜上皮細胞から薬物輸送を促進する生分解性薬物運搬体の創成を目的としている。本年度は、ポリロタキサンの合成とキャラクタリゼーション、そして粘膜からの薬物透過の指標となる膜抵抗値の測定を行った。具体的には、多数のα-CD空洞部を貫通したPEGの両末端に粘膜表面で分解可能なモノ、もしくはトリペプチド基を導入したポリロタキサンの合成とその酵素分解挙動を解析した。両末端にアミノ基を有するPEG水溶液をα-CD飽和水溶液に混合し、得られた擬ポリロタキサンを沈殿として回収した。別に、アミノ基末端に保護基(Z基)を導入したL-Phe(Z-L-Phe)のスクシンイミドエステルもしくはZ-L-TyrGlyGlyを調製し、これと擬ポリロタキサンとの縮合反応により両末端にエステルもしくはアミド結合を介してZ-L-PheもしくはZ-L-TyrGlyGlyを導入したポリロタキサンを合成した。更に、ポリロタキサン中のα-CDをヒドロキシプロピル化し、末端保護基を接触還元により脱保護したポリロタキサンを得た。In vitroでの酵素分解実験から、これらのポリロタキサンは末端ペプチド結合の酵素的分解によってその超分子構造(棒状構造)が解離することを確認した。とりわけ、末端にL-TyrGlyGly配列を導入しすると、小腸、腎臓、脳などの細胞膜表面に結合して発現されるアミノペプチターゼNにより分解されることが可能となった。ポリロタキサンの分子量は約30,000であり、通常アミノペプチターゼNが分子量2,000程度のペプチドまでしか分解できないことを考慮すると、ポリロタキサンの分解に伴う超分子構造の解離は、分解部位が棒状分子末端に存在する特徴であると考えられた。さらにポリロタキサン添加による粘膜透過性への影響を調べるため、小腸粘膜モデルとなるCaco-2培養細胞を用いてポリロタキサン含有緩衝溶液をCaco-2細胞へ添加したときの膜抵抗値を測定した。ポリロタキサンを最終濃度1%となるように添加したときに膜抵抗値は有意に低下した。膜抵抗値の低下は、細胞間からの親水性薬物透過を制御しているタイト結合が開孔したことを示す。このことから、ポリロタキサンが粘膜と相互作用することによりタイト結合を構成する細胞骨格タンパク質に影響する可能性が示唆された。以上から、ポリロタキサンと粘膜との相互作用によって薬物透過性を促進する基礎的知見を得ることができた。
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[Publications] T.Ooya,K. Arizono,N.Yui: "Synthesis and Characterization of oligopeptide-terminated polyrotaxane as a drug carrier"Polym.Adv.Tech.. (印刷中). (2000)
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[Publications] 由井伸彦、大谷 亨: "シクロデキストリンの超分子化を利用した高分子機能"日本油化学協会誌. (印刷中). (2000)
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[Publications] T.Ooya,N.Yui: "Polyrotaxanes,synthesis,structure and potential in drug delivery"Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.. 16. 289-330 (1999)
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[Publications] T.Ooya,N.Yui: "Biodegradable polyrotaxanes as a drug carrier"s.t.p.Pharma.Sci.. 9. 129-138 (1999)
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[Publications] T.Ooya,N.Yui: "Controlled Drug Delivery: Designing Technologies for the Furture, ACS Symposium Series No.752 (Ed.by K.Park)"Supramolecular-structured polymers for drug delivery,American Chemical Society (印刷中). (2000)
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[Publications] 由井伸彦、大谷 亨: "バイオミメティックスハンドブック (長田義仁:編集)"新しい生分解性高分子による薬物送達システム、シー・エム・シー (印刷中). (2000)