1999 Fiscal Year Annual Research Report
動的ラマン分析を用いた血中ブドウ糖濃度の非侵襲定量研究
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11780637
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 英俊 理化学研究所, 基盤技術開発室, 基礎科学特別研究員 (10300873)
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Keywords | ヘモグロビン / ラマン分光法 / 動的ラマン解析 / 2次元相関解析法 / 電子制御波長可変レーザー |
Research Abstract |
本年度はまず、励起波長可変ラマンシステムの改良を行った。本システムは電子制御波長可変チタン:サファイアレーザーを光源として用いているが、本年度行った生体試料の測定において、レーザーの自発蛍光成分がラマンスペクトル測定の妨害となることが分かった。従って、レーザー光源に改良を加え、世界で初めて自発蛍光を発しない新型チタン:サファイアレーザーを開発することに成功した。 次に、改良したシステムを用いて、血液中の主成分であるヘモグロビン(Hb)のラマン励起波長依存性の測定を行った。従来の可視励起ラマン分光法で全血のスペクトルを測定すると、カロテノイド(Car)のバンドが非常に強いため、その他のバンドを観測することが難しい。一方、新型レーザーを用いて測定した全血およびHb溶液のラマン励起プロファイル中には、Carによるバンドは認められず、両者は互いによく似ており、近赤外(700〜900nm)の励起光を用いると、全血中でHbが主に共鳴効果を示すことが分かった。 励起波長に対してスペクトル変化をほとんど示さない血中グルコースバンドを分離抽出するために、Hbおよび酸素化(Oxy)-Hbラマンスペクトルの励起波長依存性を測定し、共鳴によるスペクトル強度変化を解析した。その結果、近赤外の励起光に対して共鳴しているHb中のヘム色素の電子遷移は、従来考えられていたような近赤外域の吸収バンドではなく可視域の吸収バンド(αおよびβバンド)に相当する遷移であることが、初めて示唆された。Hbの近赤外励起ラマンスペクトルが共鳴による増強を示すメカニズムについてはこれまで研究されておらず、更なる解析を行う必要がある。ラマンスペクトルの形状は複雑な励起波長依存性を示しており、動的ラマン解析を行うためのスペクトル強度の規格化などについて、現在検討を行っている。
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