2000 Fiscal Year Annual Research Report
感温性ヒアルロン酸の分子設計とその創傷治癒促進剤、人工細胞外マトリックスへの応用
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11780638
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
大屋 章二 国立循環器病センター研究所, 生体工学部, 室員 (80311447)
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Keywords | ヒアルロン酸 / 感温性 / 細胞包埋 / ゼラチン / ゲル / 細胞外マトリックス / ハイブリッド組織体 |
Research Abstract |
前年度は感温性のヒアルロン酸の合成を目的とし、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)グラフト化ヒアルロン酸(PNIPAAm化HA)を合成した、PNIPAAm化ヒアルロン酸をコーティングした表面上では血管内皮細胞の接着が抑制され、この表面が細胞非接着マトリックスであることを示した。本年度はこれまでに当研究部で合成したPNIPAAm化ゼラチンとの混合により、ハイブリッド組織体構築を検討した。 15w/v%以上のPNIPAAm化ゼラチンを含む水溶液を室温から37℃に加温すると、溶液全体がゲル状に硬化した。このゲルに37℃の水を加えても溶解せず、ゲルは形状を保持した。牛大動脈由来血管平滑筋細胞を含むPNIPAAm化ゼラチンの水溶液(20w/v%)を室温から37℃に加温すると、生成するゲル内に細胞を包埋できた。ゲル内で包埋された細胞は球状であり、培養3日目にはほとんど死滅した。一方、PNIPAAm化ゼラチンにPNIPAAm化ヒアルロン酸を混合すると、細胞の形状は球状で変化がなかったが、培養3日目の細胞の生存率が少し増加した。 PNIPAAm化ゼラチンゲル内部の走査型電子顕微鏡観察の結果、PNIPAAm化ゼラチンのゲルでは孔の直径約1μmと非常に小さかった。一方、PNIPAAm化ゼラチンにPNIPAAm化ヒアルロン酸を混合すると、孔の直径が5μmに少し増加した。PNIPAAm化ゼラチンのみに比べてPNIPAAm化ヒアルロン酸を混合したゲル内での細胞の生存率が増加したのは、ゲル内部への酸素や栄養分の浸透性が向上したためであると考えられる。 PNIPAAm化ゼラチンおよびPNIPAAm化ゼラチンとPNIPAAm化ヒアルロン酸との混合ゲルは細胞外マトリックスとしてある程度は機能すると言える。現在、PNIPAAm化ゼラチン単独およびPNIPAAm化ヒアルロン酸との混合ゲルのマトリックスとしての機能性の向上について検討中である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 大屋章二,中山泰秀,松田武久: "組織工学における人工細胞外マトリックス設計:感温性ヒアルロン酸の合成と構造化"人工臓器. 29(2). 446-451 (2000)
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[Publications] Kidoaki S,Ohya S,Nakayama Y,Matsuda T: "Thermoresponsive structural change of a poly(N-isopropylacrylamide) graft layer measured with an atomic force microscope"Langmuir. (in press).