2000 Fiscal Year Annual Research Report
岩石の化学組成による兵庫県南部地震の斜面崩壊の機構の解明と崩壊予知
Project/Area Number |
11793001
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田結庄 良昭 神戸大学, 発達科学部, 教授 (90030585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅本 諭 兵庫県立公害研究所, 第二研究部, 主任研究官
駒井 幸雄 兵庫県立公害研究所, 第二研究部, 主任研究官
宮田 隆夫 神戸大学, 理学部, 教授 (00107989)
先山 徹 兵庫県立姫路工業大学, 自然環境科学研究所, 助教授 (20244692)
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Keywords | 斜面崩壊 / 兵庫県南部地震 / 急傾斜地崩壊危険区域 / 化学組成 / 崩壊機構 / 崩壊予知 / 元素逸脱 / 風化作用 |
Research Abstract |
平成12年度における本研究の実施結果は,おおむね次の通りであった。 1.本科研費で購入した電界放射型走査電子顕微鏡で斜面崩壊地の花崗岩を検討した結果,沸石脈や粘土質脈が予想より多く分布し,これら脈を滑り面として崩壊していることが明らかとなった。 2.航空写真で検討した結果,兵庫県南部地震により損傷した斜面の降雨での崩壊拡大は,六甲山地で均等に分布せず,東方に多く分布していた。 3.電界放射型走査電子顕微鏡で,崩壊斜面の岩石を観察した結果,長石や黒雲母が変質して,斜長石の核部にきわめて微細なカオリナイトなどの粘土鉱物が劈開に沿って生じ,黒雲母でも,劈開に沿ってバーミキュライトが生じていることが判明した。 4.斜面崩壊地の岩石を電界放射型走査電子顕微鏡やエレメントアナライザーを用いて,非破壊で化学分析を行い,化学組成を検討した。斜面崩壊地の岩石の元素逸脱度が大きく。特に,MgOやCaOさらにFeOが著しく減少していることが判明した。元素逸脱度が大きい所では,電界放射型走査電子顕微鏡の観察では繊維状の変質鉱物が長石表面に生じていることが明らかとなった。また,細かい粘土状のものが生じていた。 5.斜面崩壊地で元素逸脱が大きい所の断層調査を分担者の宮田が行った結果,小断層が発達し,断層面に沿って上昇した熱水により岩石が著しく変質し,多くの粘土質脈が発達し,それに沿って崩壊していた。 6.斜面崩壊多発地域の河川水の分析を分担者の駒井が行った結果,明らかにCaOやMgOなどが高い値をもち,岩石から逸脱した元素が河川水に溶け込んでいることが判明した。 7.斜面崩壊地の河川堆積物を分担者の梅本が検討すると,著しく粘土化しており,また,CaOなどが著しく逸脱していた。 8.六甲山の花崗岩類を分担者の先山が検討したところ,六甲山の花崗岩類は地形的高度が増すに従い,細粒となり,累帯マグマ溜まりが固結したことを示す。さらに,細粒花崗岩ほど,元素逸脱度が高く,風化作用が進行していた。
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Research Products
(19 results)
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[Publications] 田結庄良昭: "1995年兵庫県南部地震による斜面崩壊多発地域における磁鉄鉱系花崗岩と沸石脈存在の意義"神戸大学都市安全センター紀要. 2. 237-250 (1998)
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[Publications] 田結庄良昭: "六甲花崗岩類中の磁鉄鉱系花崗岩の存在とその意義"神戸大学発達科学部研究紀要. 5. 657-668 (1998)
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[Publications] 田結庄良昭: "地震後の急傾斜地崩壊危険区域の崩壊による災害防止の研究-危険斜面のカタログ-"神戸大学発達科学部研究紀要. 6. 101-118 (1998)
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[Publications] 田結庄良昭: "神戸市長田,谷埋め埋土地域の地震被害と地下水位"Proceedings of the 8th Symposium on Geo-Environments and Geo-Technics. 8. 193-198 (1998)
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[Publications] 田結庄良昭: "兵庫県南部地震による神戸市長田,大谷地域の人工改変地形地域の地震被害"神戸大学発達科学部研究紀要. 6. 79-89 (1999)
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[Publications] 田結庄良昭: "兵庫県南部地震後の宝塚付近の急傾斜地崩壊危険個所の危険度判定-危険斜面のカタログ作成-"神戸大学都市安全研究センター研究報告. 3. 279-298 (1999)
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[Publications] 田結庄良昭: "兵庫県南部地震により損傷した宝塚付近の急傾斜地崩壊危険個所の産状と危険度判定の試み"Proceedings of the 9th Symposium on Geo-Environments and Geo-Technics. 9. 69-74 (1999)
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[Publications] 田結庄良昭: "兵庫県南部地震による斜面崩壊地の花崗岩と鉱物の化学組成"Proceedings of the 10th Symposium on Geo-Environments and Geo-Technics. 10. 127-132 (2000)
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[Publications] 田結庄良昭: "兵庫県南部地震により損傷した宝塚付近の急傾斜地崩壊危険斜面の風化作用による元素の溶脱"神戸大学発達科学部研究紀要. 7. 101-120 (2000)
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[Publications] Komai,Y.: "Evaluation of heavy metals concentrations in river bottom sediment by long term investigation"International Symposium on water resource development and environmental problems in China. 281-287 (2000)
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[Publications] 梅本諭: "ゴルフ場からの栄養塩類の降雨時流出について-散水によるモデル実験-"兵庫県立公害研究所報告. 29. 71-75 (1997)
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[Publications] Miyata,T.: "Fallen Utility Poles Indicative of Strong Ground Movement a long Chelungpu Fault in Chi-Chi Earthquake, Taiwan"Journal of the Chinese Institute of Engineers. 23. 473-478 (2000)
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[Publications] Miyata,T: "Geophysical Surveys for Subsurface Structure of Urban Concealed Active Fault in Kobe Earthquake"Proceedings 2nd Japan-Iran Workshoop on Earthquake Engineering and Disaster Mitigation. 53-58 (2000)
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[Publications] 宮田隆夫: "集集(台湾)地震の地表地震断層と地盤運動"神戸大学都市安全研究センター研究報告. 4. 191-196 (2000)
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[Publications] 先山徹: "瓦屋根の破損からみた神戸市長田区〜北区における1995年兵庫県南部地震による被害分布"地質学論集. 51. 102-112 (1998)
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[Publications] Matsuda,T.: "Fission-track ages and magnetic susceptibility of Cretaceous to Paleogene volcanic rocks in Southeastern Sikhote Alin, Far East Russia.48,285-290."Resource Geology. 48. 285-290 (1998)
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[Publications] 田結庄良昭: "「大震災5年の歳月」第2章,住宅地における被災住民の苦闘は続く"神戸新聞出版文化センター. 105-122 (1998)
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[Publications] 田結庄良昭: "「震災と復興」第2章,地震による人工改変地域の宅地被害とその復興"神戸新聞出版文化センター. 79-91 (1999)
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[Publications] 田結庄良昭: "「震災と復興」第2章,地震による急傾斜地崩壊危険個所の被害と降雨による2次災害防止"神戸新聞出版文化センター. 56-67 (1999)