2000 Fiscal Year Annual Research Report
DNAマーカーを用いた広島湾における魚介類種苗の放流効果に関する研究
Project/Area Number |
11794009
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中川 平介 広島大学, 生物生産学部, 教授 (00034471)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海野 徹也 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (70232890)
荒井 克俊 北海道大学, 水産学部, 教授 (00137902)
|
Keywords | クロダイ / マナマコ / 放流 / マイクロサテライト / mtDNA / Dループ / 集団構造 / 18SrDNA / 磁気ビーズ |
Research Abstract |
前年度の研究では、瀬戸内海を代表するクロダイよりマイクロサテライトを単離し、放流種苗、人工種苗ならびに韓国産クロダイの遺伝的多様性を評価した。今年度は、 1)マイクロサテライトを用いてクロダイの親子鑑別、放流魚の追跡調査を行った。その結果、マイクロサテライトにより親魚と放流種苗の親子鑑別が完全に判別でき、放流魚の追跡調査も可能であった。特に、マイクロサテライトマーカーによる放流魚の追跡調査で、放流魚の分散・生残率は例年通りの傾向を示したことから、マイクロサテライトが放流魚の遺伝マーカーに有効であることが確認された。 2)mtDNA塩基配列解読による西日本ならびに南韓国におけるクロダイの集団解析においては、我が国と放流の影響が少ないとされる韓国とでハプロタイプの出現頻度や多様度に差異は認められなかった。したがって、我が国では例年200万尾のクロダイが放流されているが、幸いにも放流による遺伝的撹乱は回避されていると考えられる。また、クロダイは我が国と韓国で遺伝子プールを形成していると考えられ、遺伝資源の保全という観点からすれば、両国でクロダイの放流事業を管理すべきであろう。 3)マナマコは瀬戸内地方で珍重され、商品価値も高い。マナマコは体色によりアカ、アオ、クロの3型に分けられ、市場価格も大きくことなる。ただし、体色が異なるマナマコ3型に亜種レベルの違いがあるのか、体色は単なる環境変異体にすぎないのかは不明である。そこで、18SrDNAを指標にマナマコ3型間の分子系統学的研究を行った。その結果、マナマコ3型の1690塩基対中、わずか3座位で塩基置換が認められた程度であった。この結果よりマナマコ3型は同種であるとの結論を得た。 4)遺伝マーカーとしてのマイクロサテライトの有効性は周知の通りであるが、魚類は多種多様で、魚種間でのマイクロサテライトの汎用性が低いことから、簡便で効率よくマイクロサテライトを単離する方法が切望されている。そこで、磁気ビーズ法によるマイクロサテライト断片の選抜方法を検討した結果、従来の方法より数十倍の効率でマイクロサテライトが単離できた。
|