2000 Fiscal Year Annual Research Report
砂粒の間隙に生息する海産線虫類の、移動と分散に関する研究
Project/Area Number |
11833006
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
白山 義久 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60171055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 洋 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60303806)
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Keywords | 線形動物 / 地理的隔離 / 遺伝子交流 / 田辺湾 / Meyersia |
Research Abstract |
平成12年度も、田辺湾南岸の実験所近辺の潮下帯(水深2〜3m)と田辺湾畠島の潮間帯下部の二つの海域に生息する海産自由生活型線形動物のMeyersia japonicaの個体群間で、形態および分子生物学的観点から,その差異を明らかにすべく研究を実施した。形態学用の試料は2000年5月および8月に、また分子生物学用の試料は、2000年8月に採集した。形態学的差異は、全長などの体型に関するものと、口器内の歯の形態を中心に解析した。解析方法は光学顕微鏡画像を、デジタルカメラで撮影し、画像解析ソフトにより,計測値を得る方法を採用した。解析の結果、二つの個体群の間に、いずれの測定項目においても統計的に有意な差は見出されなかった。分子生物学的解析は、RAPD法により実施した。用いた19個のRAPDプライマーのうち、5個のプライマーが多型的バンドを有しており、計33個の多型バンドを検出したが、観察された全変異のうち、個体群間の変異の割合は、1.13%であり、2個体群間に有意な遺伝的差異はみられなかった。これらの結果から、ほとんど移動能力はないにもかかわらず、地理的に隔離されてるMeyersia japonicaの2個体群間には、遺伝的交流が存在することが明らかになった。しかし、当初予定していた台風の影響の調査は、研究期間中に台風が田辺湾に接近しなかったため実施できず、台風が遺伝子交流に貢献しているかどうかは、明らかにできなかった。
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