2000 Fiscal Year Annual Research Report
日本近海における外洋性昆虫Halobates属3種の分布と繁殖戦略
Project/Area Number |
11833015
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
井川 輝美 盛岡大学, 文学部, 助教授 (80212728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 守 三重大学, 教育学部, 教授 (80167171)
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Keywords | Halobates / Gerridae / 外洋性昆虫 / 分布 / 東シナ海 |
Research Abstract |
東京大学海洋研究所研究船淡青丸による航海(航海番号KT0008、四国沖・九州沖を含む海域)に参加して外洋性昆虫Halobates spp.の採集調査を行い、Halobatesの飼育に挑戦した。生きたハエを餌として与え水槽中の海水にポンプで空気を導入する等の工夫をして、航海中に多くのHalobatesを生存させ、その行動を観察することも可能となった。しかしながら、Halobatesは陸上での輸送に極めて弱く、長期に生存させることは不可能であった。今後、飼育法の確立のためには更なる研究を要することが判明した。 個体群調査としては、三重大学練習船勢水丸、長崎海洋気象台附属長風丸の航海によってこれまでに東シナ海を中心として採集されたHalobates spp.全採集個体の分類が完成した(分類が極めて困難な幼虫全個体を含む)。現在、Halobatesの生息する海洋環境の評価とともに、個体群データの解析中であるが、これまでに以下の結果が得られている。即ち、東シナ海、高知・九州沖では、Halobates germanus,H.micans,H.sericeusの3種が採集されたが、同一のネットに2種、あるいは3種得られることが頻繁にあり、しかも、1種類のみが多数を占めるのではない。このことは、少なくとも2種は比較的狭い海域に存在することを示唆している。これまで東太平洋、太平洋ハワイ沖で報告されている結果では、Halobatesは同じネットで同時に採集されることは希であり、棲み分けがよく行われていると考えられていた。日本近海では黒潮の強い潮流の影響等のため、他の海域と比較してHalobatesはより強い海洋表面の流れの影響を受け、異なる分布様式を呈する可能性が示唆された。
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