Research Abstract |
ウィスターラット(雄性,6週齢)約80匹を用い,脳髄をTh6からTh12の間で半側横断或いは完全横断し,脊髄損傷ラットを作成した。これらの脊髄損傷ラットについて,経時的動作観察を行い,麻痺筋の機能回復状態を検討すると同時に,損傷部脊髄,及び麻痺骨格筋について組織学的,組織化学的,免疫組織化学的,分子病理学的及び電子顕微鏡学的に観察した。先ず,経時的動作観察では,脊髄半切動物においてその機能回復は著しく,術後2週で既に正常歩行に近い状態にまで回復した。この結果から,損傷脊髄に代償機能の存在することが明らかとなった。形態学的には,損傷部近傍の脊髄において横走するセロトニン含有神経線維の増加することが観察された。電子顕微鏡学的には星状膠細胞,小膠細胞の増加が見られ,特に,星状膠細胞は著明に肥大し,樹状突起の著しく延長することが観察された。骨格筋細胞では,術後1週間まで麻痺筋は著しく萎縮し,ミトコンドリア酵素(NADH,SDH)の減少,筋細胞のtypeIからtypeIIへの移行(ATPase染色による観察),等が観察され,電子顕微鏡学的には細胞小器官の変性過程が観察された。その後,筋細胞の萎縮は徐々に回復するが,筋細胞には大小不同が目立ってくる。又,分子病理学的には,麻痺筋のミオシン重鎖のアイソフォームの経時的変化をウェスタンブロッティングにより観察し,興味ある変化を得ている。 以上の新知見は,大部分論文にまとめて投稿中であり,すでに受理されたものもある。
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