1999 Fiscal Year Annual Research Report
上肢神経障害の発症機序に関する研究-腕神経叢の易損性と神経重複障害-
Project/Area Number |
11835022
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山鹿 眞紀夫 熊本大学, 医学部・附属病院, 講師 (90145318)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井手 淳二 熊本大学, 医学部, 助手 (10253725)
|
Keywords | 腕神経叢 / 末梢神経牽引 / 微小管 / 神経易損性 |
Research Abstract |
我々はこれまで軽微な牽引力による上肢の末梢神経障害について報告してきた。今回この病態を解明することを目的とし、以下の知見が得られたので報告する。 実験1:電気生理学的に障害を来さない軽微な牽引力の決定 【方法】ラット上肢を肩関節80^゜方向に牽引した。牽引力は1N,2N,5N,10N,牽引時間は1時間とした。牽引前・中および牽引後1時間で複合神経活動電位(CNAP)を測定した。【結果】1N,2N,5N,10Nで、CNAPはそれぞれ平均78%,55%,26%,7%に低下し、1N,2Nでは牽引解除後速やかに回復するものの、5N,10Nでは解除後1時間でも回復が見られなかった。【考察】1N,2Nを電気生理学的に障害を来さない牽引力と決定した。 実験2:軽微な牽引負荷が神経軸索輸送に及ぼす影響 【方法】ラット上肢を肩関節80°に2N,1時間牽引した。施行直後標本を作製し、光学顕微鏡、電子顕微鏡で観察した。光顕で確認後、電顕で神経軸索を5万倍で各群100枚ずつ撮影し、1視野(0.027μm^2)における微小管をカウントした。正常群も同様に行った。【結果】光顕では異常はみられなかった。正常群の平均微小管数は腕神経叢で40.4±17.4、正中神経で76.5±29.2であった。牽引群では腕神経叢で20.0±10.5、正中神経で68.3±31.8であり正常群と比較して腕神経叢で有意に低下していた(P<0.01)。【考察】電気生理学的に障害を来さない程度の軽微な牽引負荷でも、腕神経叢で選択的に微小管の減少がみられており、腕神経叢の易損性を示す結果となった。微小管は神経軸索輸送に深く関与しており、軽微な牽引よって、脳神経叢で軸索輸送障害を来すことにより臨床症状が出現する可能性がある。今後更に同モデルを用いた研究を進める計画である。
|