Research Abstract |
本研究では,木曽馬を用いた心身障害児の乗馬を実施し,その治療効果を工学的計測,解析法を用いて心身両面にわたって客観的,定量的に評価し,また,障害児乗馬用の支援用具や環境整備を行い,科学的な乗馬セラピーの確立をめざすことを目的とした。乗馬セラピーは欧米で約50年の歴史をもつが,わが国では10年にもみたない。現在,各団体や個人がセラピーに実施方法,馬具,馬の調教などの解説書や指導書を苦心して作成し,実践している。本研究ではそうした各種の資料を入手し,乗馬セラピーの実態を調査した。また,インターネットを始め色々な方法を用いて1960年代から現在までの国際学術誌に掲載された論文を検索した。その数は10数編を検索できたにすぎず,その内9編を入手し,邦訳した。こうした現状を考えると,乗馬セラピーの研究は内外とも発展途上にあるかもしれない。乗馬時の人および馬からの生体信号の収集は乗馬セラピーを評価する上で不可欠である。しかし,人,馬ともダイナミックな動きをすることから,特に大きなアーチファクトの混入が予想され,通常の生体信号を計測する方法を援用することができない。そこで,心電図,筋電図,加速度計測を中心に,乗馬時に発生するアーチファクトを低減させる方法を検討した。また,これらの計測は屋外で実施されるため,全ての計測データは無線によって収集する。そこでは行動範囲が広いために通常の生体用テレメータの送受信能力を超えることがある。このため,アンテナの配置など様々な工夫を行い,技術的な対応を試みた。次年度は心身障害児を対象に乗馬時の生理的反応を計測・解析し,また,乗馬支援用具の開発に着手する予定である。
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