1999 Fiscal Year Annual Research Report
生命システムの持つ多様化、分化、情報生成、動的安定性の原理
Project/Area Number |
11837004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 邦彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30177513)
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Keywords | 細胞分子 / 肝細胞システム / 不可逆性 / 安定性 / 遺伝型 / 表現型の進化 / エネルギー蓄積 / 相互内部力学系 |
Research Abstract |
生命現象の本質を適度に抜きだした力学系モデルを設定し、そこでの現象を解析することを通して、どのような条件のもとで、生命現象の特性があらわれるかを明らかにし、そのための論理を探った。主要な進展としては以下が挙げられる。 (1)細胞分化システム:細胞内の化学反応ネットワーク、拡散相互作用、増殖だけによって、分化発生が起こることを示してきたが、ネットワークを変えて増殖速度を調べることにより、カオス的なダイナミクスを持って分化するような反応ネットワークを持った方が集団として速く増殖でき、進化で選べられてきただろうと示した。また、幹細胞から、他へ分化していく不可逆過程が、多様性やカオスの減少として記述されることを示した。 (2)空間的相互作用を含めた細胞分化モデルを解析し、チューリングの形態形成理論とは異なる型のパタン形成が生じることを示した。さらに、細胞内部のダイナミクスに基づいて位置情報が生成し、安定なパタンが維持されることを示した。 (3)総分子数が多くなく、ゆらぎが多い系では、コントロール的役割を持つ少数の分子と多様増殖をになう分子への分離過程が生じることを示した。この立場からデジタル情報を担う遺伝情報と代謝への役割分化を捉えるようとしている。 (4)ダーウィン進化論の枠の中でも相互作用によって表現型が分化すると、それが遺伝的進化を促しうることを示してきた。この成立条件調べ、特に、これまでの進化理論で説明されにくい、低いpenetranceと進化の関係、進化のテンポの非一様性などを議論した。 (5)分子内のモードが分化し、ある時間範囲では一部にエネルギーを蓄える構造が出現することを明らかにした。実際、分子の一部に蓄えられた高いエネルギーは非常に長い時間維持される。その時間が蓄えたエネルギーEについて、ハミルトン系ではexp(E)、熱浴がある場合にはEのべきで長くなることを、理論、数値計算から示した。
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[Publications] K.Kaneko: "Isologous Diversification for Robust Development of Cell Society"J.Theor.Biol.. 199. 243-256 (1999)
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[Publications] K.Fujimoto: "Noise Induced Boundary Dependence through Convective Instability"Physica D. 129. 203-222 (1999)
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[Publications] T.Yamamoto: "Tile Automaton : a model for an architecutre of a living system"Artificial Life. 5. 37-76 (1999)
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[Publications] T.Shibata: "Noiseless Colletive Motion our of Noisy Chaos"Phys.Rev.Lett.. 82. 4424-4427 (1999)
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[Publications] N.Kataoka: "Functional Dynamics I"Physica D,in press.
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[Publications] N.Nakagawa: "Energy Storage in a Hamiltonian System in Partial Contact with a Heat Bath"J.Phys.Soc.Japan. (in press).
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[Publications] K.kaneko: "Robust and Irreversible Development in Cell Society as a General Consequence of Intra-Inter Dynamics"Physica A,. (in press).
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[Publications] 金子 邦彦: "複雑系生命科学の構築にむけて(1)"パリティ. 15-01. 4-11 (2000)
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[Publications] 金子 邦彦: "複雑系生命科学の構築にむけて(2)"パリティ. 15-02. 4-13 (2000)
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[Publications] 金子 邦彦: "複雑系生命科学の構築にむけて(3)"パリティ. 15-03. 21-25 (2000)
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[Publications] 金子 邦彦: "複雑系生命科学の問題"数理科学. 441. 28-36 (2000)