1999 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌かく乱物質による神経障害の分子機構-有機スズによる海馬障害をモデルとして-
Project/Area Number |
11839011
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 進昌 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (10106213)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 良斉 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (70303766)
|
Keywords | 内分泌かく乱物質 / トリメチルスズ / 海馬 / 神経細胞死 / 学習障害 |
Research Abstract |
有機スズの1種であるトリメチルスズ(TMT)の1回経口投与によって、海馬CA3野の錐体細胞が選択的に脱落するが、このときにCA1野でもやや程度は軽いが細胞障害があること、歯状回分子層では苔状線維の発芽(sprouting)を認めた。この変化は副腎摘出によって血中コルチコステロンを枯渇させると著明に悪化し、一方メチラポンをTMT投与初期のみに投与して一過性にコルチコステロン分泌を抑えると、CA1>CA3での細胞死、発芽がともに抑制され、同時に学習障害も改善されることを発見した。すでに我々はTMT投与後細胞死の前に一過性に血中コルチコステロンが上昇することを認めており、今回の結果は、このHPA-axisの活性化が細胞死と学習障害の引き金になることを示唆する一方、永続的な副腎機能の廃絶は海馬の神経毒耐性を低下させることを意味する。この効果は海馬ステロイドホルモン受容体を経由すると考えられるが、さらに受容体作動薬を用いた実験により、そのサブタイプのうちTypeII Glucocorticoid Receptorsを介する効果であることを見出した。また、免疫担当細胞の関与を見るためにIL-1 α/β,TNF-αの発現を検討しているが、IL-1活性化がHPA-axis活性化に先立つこと、IL-1 αがミクログリアで最初に、続いてIL-1 βがアストログリアで発現することを認めた。次年度以降は、この神経-免疫-内分泌相関が海馬における細胞死や学習記憶機能にいかに関係するかについて、さらに検討を進める予定である。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 綱島 浩一他: "トリメチル錫(TMT)によるラット海馬でのNeuropeptide Yおよびsomaxostatinの変化"脳と精神の医学. 10(1). 43-52 (1999)
-
[Publications] 森信 繁 他: "臨床生化学・神経内分泌検査からみたPTSDの病態"臨床精神医学. 29(1). 41-47 (2000)
-
[Publications] 石田 展弥 他: "全般てんかんモデル開発と発作機構"神経研究の進歩. 44(1). 23-35 (2000)
-
[Publications] JINDE,Seiichiro et al: "Elevated neuropeptide Y and corticotropin〜releasing factor in the brain of a novel epileptic mutant rat : NodaepilepHC rat"Brain Research. 833. 286-290 (1999)
-
[Publications] NAGAKI,Shigeru et al: "Upregulation of brain somatostatin and neuropeptide Y following lidocaine-induced kindling in the rat"Brain Research. 852. 470-474 (2000)
-
[Publications] 高橋 良斉 他: "海馬とストレス (「大脳辺縁系」収載)"ブレーン出版 (印刷中).