内分泌かく乱物質のマウス、魚類への発生内分泌学的影響

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11839022
• Research Institution: Okazaki National Research Institutes
• Principal Investigator: 井口 泰泉 岡崎国立共同研究機構, 綜合バイオサイエンスセンター, 教授 (90128588)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 勝 義直 岡崎国立共同研究機構, 綜合バイオサイエンスセンター, 助手 (00332180)
• Keywords: ビスフェノールA / ジエチルスチルベストロール / 胎仔影響 / 胎盤透過 / 低用量影響 / 尿道下裂 / エストロゲン受容体 / アポトーシス

Research Abstract

妊娠17日目のマウスおよび妊娠150日目のニホンザルにbisphenol A(BPA)を投与し、30分-1時間後には胎盤、胎仔の血清、肝臓、脳、子宮、精巣にBPAが到達していることを確認した。妊娠中にdiethylstilbestrol(DES)あるいはBPAを暴露したマウスでは、高濃度のDES投与群では不妊であったが、BPAや低濃度のDES投与群では正常に妊娠出産した。DESに暴露したマウス胎仔では、生殖腺付属器官におけるHoxa-9、a-10の発現が低下した.妊娠11-17日目にDES0.02,0.2,2μg/kgとBPA.2,20μg/kgを投与し、仔に対する影響を見たところ、雌においては、BPA20μg群と、DES処理の全実験群で膣開口日が有意に早くなり、その時点の体重は有意に軽くなった。出生直後の雌マウスにDES3μgを5日間投与したところ、2日齢から3日齢にかけて、アポトーシスを伴う、尿道腔から膣への癒合が起きた。尿道下裂の臨界期は生後7日であることを確認した。BPAでは高濃度でも尿道下裂は起きなかった。出生直後のDES投与群ではすべてのマウスが連続発情を示し、BPA投与群では一部のマウスが連続発情を示した。BPAは高濃度であれば新生仔の生殖器官に対して不可逆的影響を及ぼすことを確認した。
水系環境におけるエストロゲシの影響を調べるため、海産メダカであるマミチョグ(Fundulus heteroclitus)を用い、受精卵からエストロゲン曝露を行った。その結果、形態異常、骨形成異常、性分化率の変化及び生殖腺の異常が引き起こされた。エストロゲン受容体(ER)alphaおよびbeta型のクローニング及び、ERmRNAの発硯解祈を行った。FTZ-Fl、Ad4BP/SF-1遺伝子のクロー二ング及び、各器官における発現の解析を行った。ゼブラフィッシュの性分化を調べ、雌から雄化に至る過程で、卵母細胞のアポトーシスを認めた。

Research Products

• [Publications] Hirabayashi,H. etc: "Apoptotic cell death in artificially induced deciduoma of pseudopregnant mice."Anat.Rec.. 254. 205-213 (1999)
• [Publications] Fukazawa,Y.and T.Iguchi: "Effects of steroid hormones and growth factors on the development of the male mouse reproductive tract in vitro."Zool.Sci.. 16. 153-160 (1999)
• [Publications] Yamamura,Y. etc: "Differences in methallothionein expression in transplantable mouse mammary tumor lines."Cancer Lett.. 138. 167-174 (1999)
• [Publications] Cunha,G.R.,J.-G.Forsberg etc: "New approaches for estimating risk from exposure to diethylstilbestrol."Environ.Health Perspect.. 107. 625-630 (1999)
• [Publications] Hashimoto,S. etc: "Elevated serum vitellogenin levels and gonadal abnormalities in wild flounder (Pleuronectes yokohamae) from Tokoyo Bay, Japan."Marine Environ.Res.. 49. 37-53 (2000)
• [Publications] Iguchi,T.: "Hormonal Chaos."Nature Med.. 6. 246-247 (2000)
• [Publications] Yamamura,Y.,K.Sayama etc: "Further study of mcthallothionein expression in transplantble mouse mammary tumors."Anticancer Res.. 20. 379-384 (2000)
• [Publications] Iguchi,T.: "Developmental effects of estrogenic agents on mice, fish and frogs."Trabajos del Instituto Cajal.. LXXVII. 52-53 (2000)
• [Publications] Iguchi,T.and T.Sato: "Endocrine disruption and developmental abnormalities of female reproduction."Am.Zoologist. 40. 402-411 (2000)
• [Publications] Iguchi,T.,H.Watanabe etc: "Developmental effects of estrogenic agents on mice, fish and frogs"Horm.Behav.. (in press).
• [Publications] 井口泰泉: "急がれる環境ホルモンの影響解明と予防対策"アニムス. 4. 48-52 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモン(内分泌かく乱{障害性}物質)"Medical forum Chugai. 3. 30 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)について"とうやく. 354. 34-42 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモンの生態系への影響と世界の対応"エコインダストリー. 4. 5-26 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "外因性内分泌撹乱化学物質environmental endocrine disruptors"Annual Review内分泌代謝. 51-56 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモン問題と分析化学"ぶんせき. 2. 156-160 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)"綜合臨床. 48. 37-39 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)"化学と教育. 47. 132-136 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "身近にある恐怖「環境ホルモン」とその警告の書「奪われし未来」"English Journal. 29. 22-23 (1999)
• [Publications] 佐藤友美,井口泰泉: "エストロゲン受容体と環境ホルモン"現代化学. 340. 31-36 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "環境と形態異常"産科と婦人科. 66. 911-917 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "どこまでわかった環境ホルモン"日経サイエンス. 29. 151-152 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "「奪われし未来」が警鐘を鳴らす現代社会の脅威環境ホルモン"English Journal. 29. 14-17 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "ピル解禁は朗報か"正論. 8月号. 54-57 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱化学物質"医学のあゆみ. 188. 789-792 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の生態系への影響"日本医師会雑誌. 121. 635-638 (1999)
• [Publications] 佐藤友美,井口泰泉: "エストロゲンと内分泌撹乱物質"産科と婦人科. 66. 201-209 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "外因性内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)とは"周産期医学. 29. 393-397 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質(環境ホルモン)と生殖"産婦人科治療. 78. 375-379 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモン問題に研究者はなにができるか"科学. 69. 435-436 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の生物への影響"日本臨床環境医学会. 8. 62-71 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "野生生物への影響の分科会の報告"日本リスク研究学会誌. 11. 32-36 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の何が問題か"日本小児臨床薬理学会雑誌. 12. 35-40 (1999)
• [Publications] 佐藤友美,井口泰泉: "内分泌かく乱物質によるマウス生殖器官への影響"日本小児臨床薬理学会雑誌. 12. 41-46 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "生態への影響・2"公衆衛生. 63. 835-838 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモン(内分泌かく乱物質)による生物影響"下水道. 36. 4-7 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "水環境と水生動物への内分泌撹乱物質の影響"水環境学会誌. 22. 636-642 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "小・中学校では判断力を養う教養を"論座. 10月号. 35-36 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌攪乱物質(環境ホルモン)問題"医学のあゆみ. 190. 721-725 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質"最新医学. 54. 2490-2495 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の何が問題か"岡山実験動物研究会会報. 16号. 2-5 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱物質と生殖異常"内分泌・糖尿病科. 9. 577-582 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の野生動物への影響"性差医学. 6. 36-44 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "生活環境と生殖機能"医学のあゆみ. 192. 1118-1119 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌攪乱物質と生殖腺附属器官の不可逆的異常"実験医学. 18. 747-751 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質(環境ホルモン)"Milk Science. 49. 53-58 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモンと科学技術"学際研究. 13. 17-21 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌撹乱物質と野生生物の生殖異常"産婦人科の実際. 49. 1031-1038 (2000)
• [Publications] 佐藤友美,井口泰泉: "内分泌かく乱物質問題について"横浜市立大学論叢自然科学系列. 50. 129-140 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質(環境ホルモン)について"6-11 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "性分化異常と環境ホルモン"Hormone Frontier in Gynecology. 6. 257-262 (1999)
• [Publications] 井口泰泉,井上達 他: "内分泌撹乱化学物質この物質がもたらす問題の本質は何か"ファルマシア. 35. 213-218 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "野生動物への影響"ドクターサロン. 44. 68-71 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質(環境ホルモン)"J.Clinical Rehabilitation. 9. 167 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "化学物質のリスクと安全性"化学工業. 51. 770-776 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "巻頭言環境ホルモン研究に期待されること"科学. 70. 909 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモンと茶"茶の世界. 4. 28-35 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌攪乱物質(環境ホルモン)"医学のあゆみ. 195. 1074-1076 (2000)
• [Publications] 井口泰泉,渡邊肇 他: "内分泌攪乱化学物質による生態系への影響-ゴードン会議から-"日本臨床. 58. 2401-2408 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "海外におけるダイオキシン曝露地域住民の長期健康調査研究"日本臨床. 58. 2502-2507 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモンとその取り組み"かんぽ資金. 271. 10-15 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質(環境ホルモン)問題について"防菌防黴誌. 28. 19-27 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質問題について"神奈川母性衛生学会誌. 3. 7-12 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "内分泌かく乱物質問題について"歯界展望. 増刊号. 180-183 (2001)
• [Publications] 井口泰泉: "化学物質と環境問題"教養日報. 614号. (2000)
• [Publications] Iguchi,T.: "Environmental Endocrine Disrupters."Taylor & Francis,New York.. 355 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "子どもを取り巻く環境ホルモン"芽ばえ社. 93 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモン家族を守るためにできること"PHP. 125 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "ブリタニカ国際年鑑1999年度版"TBSブリタニカ年鑑. (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "心とからだいきいき学習8 環境汚染と健康障害さわやかかんきょうノート"ぱすてる書房. 160 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "これからどうなる21予測・主張・夢"岩波書店編集部. 497 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "奪われし未来増補改訂版"翔泳社. 465 (2001)
• [Publications] 井口泰泉: "環境ホルモンの問題とその対策"オーム社. 262 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "気になる症状からみた疾患"薬事日報社. 287 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録"数研出版. 233 (2000)
• [Publications] 井口泰泉: "どうしたらいいの?環境ホルモン"読売新聞社. 237 (1999)
• [Publications] 井口泰泉: "環境を化学の目で見る"日本化学会. (1999)