2000 Fiscal Year Annual Research Report
トランス・カルチュラル・エステティックス-アジアを視点として
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11871007
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡林 洋 同志社大学, 文学部, 助教授 (80185462)
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Keywords | カルチュラル・スタディーズ / 美学 / 越境文化 / トランス・カルチャー / 帝国主義 / ポスト・コロニアル / 宝塚レヴュー / 宝塚らしさ |
Research Abstract |
2000年度中にも方法論上の明確な提案がおこなわれるかに思われていたトランス・カルチュラル・エステティックス(越境文化主義の美学)の研究が現在世界各地で足ぶみ状態にある。その行きづまりの原因を挙げることが第一、問題解決の打開策をさぐることが第二の課題である。1)論文「文化主義の美学-ヴェルシュ「AESTHET/HICS」を手がかりに」では、従来、美学の領域では美的趣味は一国文化の中で通用するもの,対異文化の関係では、それは当然趣味の体質改善を必要とする。その際、文化論がクローズアップされることがあっても、まだ美学の美的趣味の体質改善ははじまっていないことが明らかになった。美学をトランス・カルチュラルな次元でとらえ直すためには、複数の異文化間の境界を通行可能にするような趣味(通行手形)は、「美的」(ある一方の文化的趣味にとって満足の行く)独占状態を脱し、異文化と結びつき,文化の異質性へと移行する趣味が必要。それをかろうじて示唆してくれたのが、ヴェルシュの1、2の論文であり、特に彼の「AESTHET/HICS」(審美/倫理学)は、美学が異文化問題を「美的公平さ」の観点から扱う法廷としての役割をになうことを提案している。特に本研究は日本を含むアジアからの同種の提案に注目しており、それは学術研究の側からのみならず、逆に芸術、文化実践あるいは美術館等の社会教育実践家からの提案の検討にまで広がっている。 2)論文「美学の法廷/帝国の劇場」は、「美学の法廷」にサイードの「オリエンタリズム」や「帝国主義の楽しみ」といったコンセプトや文化事例を特ち込み、再吟味をおこなったものである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 岡林洋: "美学の法廷/帝国の劇場-美的正義それとも帝国主義の楽しみ(I)"人文学. 169号. 1-17 (2001)
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[Publications] 岡林洋: "文化主義の美学-ヴェルシュ「AESTHET/HICS」を手がかりに"美学芸術学. 16号. 1-14 (2001)
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[Publications] 岡林洋: "書評未完のトランス・カルチュラル・エステティックス"日本の美学. 31号. 147-150 (2000)
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[Publications] 岡林洋: "書評「パリ以上にパリらしい」宝塚らしさの読み方"文化学年報. 50号. 77-87 (2001)