1999 Fiscal Year Annual Research Report
環境美学研究-ロマン主義にもとづくあたらしい自然哲学の企て-
Project/Area Number |
11871008
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Research Institution | Takaoka National College |
Principal Investigator |
伊東 多佳子 高岡短期大学, 一般教育科目等, 講師 (00300111)
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Keywords | 環境美学 / 環境芸術 / ロマン主義の美学・自然哲学 |
Research Abstract |
今年度の研究は以下のような成果をあげた。将来の人間と自然との関係を考えるためのモデルとしての環境美学を打ち出すために、研究計画にそって、人間と自然との関係を最も直接的に反映している現代の環境芸術に関する考察をもとにして、自然哲学思想と芸術論をめぐるロマン主義思想の再検討をおこなった。また、実際の作品を自分の目で見ることや作品制作の現場に立ち会う機会をできるだけ多くもち、環境美学の構想を具体的な面で検証していくことにも意を注いだ。さらに、最近とりわけドイツで盛んになってきた「自然についての美学」、「生態学的美学」といった、自然について考察する美学や哲学の文献に接することで、自らの構想である環境美学の論理との異同を確認することもおこなった。 概要は以下のとおりである。「自然とはなにか?」という自然哲学の根本的な問いは、今日では環境問題によって動機づけられている。人間自身が自然であり、自然のうちで自然とともに生きなければならないことに気づかされている現代、これまでの人間の自然との関係の修正をはかるような自然哲学が必要となる。環境美学もまたその一部として、危機的な状況の診断や治療にかかわってゆく。自然科学的なものの見方の有効な部分を生かしつつ自然との共生を得るために、自然と人間の媒介者となる芸術という、自然・哲学・芸術が一体になったロマン主義の美学思想を基礎として、感情の問題を切り捨てることなく、自然とどのように向き合い、自然環境の劣化にどう対処してゆくべきかを、ひとりひとりが自ら思索するための素地となる思考の枠組みを環境美学は提示するのである。
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