1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11871009
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
五十殿 利治 筑波大学, 芸術学系, 助教授 (60177300)
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Keywords | 美術展覧会 / 観衆 / 明治大正名作展 / 東京府美術館 |
Research Abstract |
本年度においては、昭和2(1927)年に東京府美術館において開催された「明治大正名作展」について、展覧会目録や図録など基礎的な資料についての検討とともに、同種の企画、昭和3(1928)年から発行の平凡社版「世界美術全集」、あるいは昭和12(1937)年大阪朝日新聞社が開催した「明治大正昭和聖三代名作展」との作品選考の比較を行い、「明治大正名作展」の基礎づけた「名作」の位置づけを再検討した。 また、この「名作」の位置づけにとって重大な要素が、美術館であったことが判明した。つまり、「名作」展は文字通り「名作」が展示される場であるという意識が強く働いており、仮の近代美術館という様相を呈した。東京府美術館は篤志家の寄贈になる近代的な建建物であったが、肝心の収蔵作品を欠くために、展示機能と収蔵機能が分離した、欧米的な基準からみれば変則的な施設となった。「美術館」でありながら「美術館」ではないことがその後戦後に至るまでの日本美術の構造に見逃しがたい歪みをもたらしたことは周知のことであるが、この「名作」の位置づけにおいても、その歪みが仮の近代美術史という形で露呈していることが明らかになった。
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