1999 Fiscal Year Annual Research Report
制度としての意味世界の形成における感情と合理性の研究
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11871030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
盛山 和夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50113577)
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Keywords | 制度変動 / 競争的市場 / 集合的決定 / 行為選択 / 意味世界 / 性別役割分業 / 構造機能主義 |
Research Abstract |
制度変動という観点からは、従来からの公式制度・非公式制度という区分が重要である。公式制度とは、ある集合的決定を経て明示的に定められた制度である。したがって、その変動は集合的決定手続きを必要とする。他方、非公式制度は集合的決定なしに、人々の行為とそれを支える意味世界とによって成立している。たとえば性別役割分業は1960年代まで非公式制度として存立していた。労働環境の変化、人口革命、高学歴化などが、それを支えてきた意味世界を解体し、性別役割分業は自明のものではなくなった。変化した意味世界のもとで、何が合理的な行為であるかが変化し、所与の秩序に対する感情的態度が変化する。それによって、人々がとる行為のパターンに変化が起こる。他方、公式制度レベルでは、男女雇用機会均等法がそれを否定する。 第二の重要な区分は、制度をとりまく環境の競争的市場性であり、淘汰メカニズムが作動するか否かである。競争的市場にさらされている民間企業の場合、性別役割分業の維持ないし解消は、その市場的合理性に規定されざるをえない。それは、意味的合理性と対立する可能性をもつ。しかし、制度のすべてが競争的市場にさらされているわけではない。非公式制度としての性別役割分業は、淘汰メカニズムとは別のメカニズムによって変化したものと考えられる。 ところで、構造機能主義的社会変動論は、淘汰メカニズムの自省的内部化という構図をとるが、それの適用は、競争的市場における集合体の公式制度に限定されるということを、別掲論文で示した。
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