1999 Fiscal Year Annual Research Report
観光化にともなう文化表象の変化に関する研究-インドネシア・ママサの伝統家屋を例に-
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11871031
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
稲垣 勉 立教大学, 観光学部, 教授 (10151573)
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Keywords | 観光化 / 文化表象 / 伝統家屋 / アイデンティティネゴシエーター / ツーリストアート / ママサ(Mamasa) / スラウェシ(Sulawesi) |
Research Abstract |
本年度はまず既収集データの整理を中心に研究を進め、あわせて関係文献の収集・整理を実施した。また平成11年12月23日より翌12年1月5日の期間、現地インドネシア共和国南スラウェン州ママサにおいて実地調査を実施し、伝統家屋所有者をはじめとする地域住民、行政関係者、関連事業者を対象に面接調査を行った。 この結果、現地における観光化の状況が明らかになり、またママサ地方における伝統家屋の名称と、社会階層に対応した伝統家屋の形態別カテゴリーについての基礎的な資料の収集が終わり、従来の理解とは異なり、伝統家屋カテゴリーは家屋の形態より、むしろそれを所有する人物の出身階級に関する地域社会における認知により大きく依存することが明らかになった。またママサ地方は同文化圏のトラジャ同様、家屋のカテゴリーと階級が対応する固有のシステムを持つことで知られる。しかし現在では、社会構造の流動化にともない、この対応システムを越えた家屋所有、つまり社会的侵犯が少数ながらも見られるようになった。同時にこれらの侵犯が、観光客への自文化の展示という、観光化を前提に正当化されていく構造も明らかにすることができた。 また今回の調査では、経済的にはより優位にある同族トラジャに対し、家屋の装飾などいわゆるツーリストアートを通じて、ママサ地方がアイデンティティを主張する構造も調査の対象であった。こうしたサブエスニックグループ間のアイデンティティ形成に、表象が如何に関わるかの基礎的資料の収集も進んでいる。本年度はこうした成果をもとに、再度現地調査を実施し、分析の精緻化を図る予定である。
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