1999 Fiscal Year Annual Research Report
責任の様態と集団の境界構造との関係に関する知識社会学的研究
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11871032
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
井腰 圭介 帝京科学大学, 理工学部, 講師 (50222914)
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Keywords | 責任 / 集団の境界 / 知識社会学 / 予期 / 知識の類型 / 罪と罰 |
Research Abstract |
本年度は、1.先行研究から「責任」分析の方法論的問題を洗い出し、2.今後の分析に必要な仮定をE.デュルケムの研究から取り出すことにあった。その成果は以下の通りである。 1.これまでの「責任」研究は、規範を侵犯した場合に加えられる制裁としての「罰」の問題と侵犯に対する認識にかかわる「罪」の問題という二つの方向に、事実上、研究成果が大きく分化していた。このように結果的に責任自体が直接の焦点とならず、常に「罪と罰」という二つの要素に分解されてしまう背景を定式化するために、責任が備えている「宗教的側面=罪」と「社会的側面=罰」とを仮定し、「責任を負うべき対象設定の仕方」によって、この分化が生じることを幾つかの事例を使って例証した(日本宗教学会報告)。 2.責任の二つの側面を理論的に位置づける為に、宗教と社会の相即性を説いたE.デュルケムの『宗教生活の原初形態』を検討し、責任観念に含まれる「応答の仕方」と集団形成との関係を明らかにした。集団形成とは、自他を互いに応答対象として設定することである。デュルケムは、シンボルを介した自他の同一視が発生する仕組みを「集合的沸騰」によって定式化したが、従来それは心理的興奮状態と解されてきた。しかし、それは予期が極限的に縮小され、互いの行動が事実上一体化した状態を意味すると解するのが妥当である。何故なら、このように解することで、彼が他の著作で主張する、連帯の強度が「自他の意識化の程度」によって変化するとした仮説や「知識の機能」に関する仮説を含めた一連の研究全体が一貫した理論として解釈可能となるからである。このように、宗教と社会は「予期」という次元で接合されるとするデュルケムの仮定を明らかにし、予期を支える「応答対象を設定する知識」によって集団の境界構造がどう変化するかを若干の事例で試験的に検討した(日本社会学会報告)。
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Research Products
(2 results)