1999 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における新宗教と社会のコンフリクトに関する社会学的研究
Project/Area Number |
11871036
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
対馬 路人 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60150603)
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Keywords | 新宗教運動 / 「カルト」問題 / 宗教統制 |
Research Abstract |
現代日本におけるいわゆる「カルト」問題がどのような時代的特質を有するのかを比較的な視角から考察するために、近代以降の日本における新宗教と社会のコンフリクトのパターンについて概観した。日本におけるこれまでの社会の側からの新宗教批判には、繰り返し現れる主要なパターンが幾つか見いだされる。教団が行った独自の治病行為に関わるトラブル、教団の献金や集金のシステムへの疑念、教団の政治(的問題)への関与に対する恐れ、指導者の個人的スキャンダルなどから生じるその人格への疑惑などである。こうしたコンフリクトのパターンは現代のいわゆる「カルト」をめぐる争点においてもしばしばみられる。その意味で今日の「カルト」問題も必ずしも全く新しい社会現象というわけではない。しかし、今日の「カルト」問題ではこれまであまり取り上げられてこなかった争点が幾つかクローズアップされてきている。例えば、若者や子供をめぐる家族と教団の争奪戦、「マインドコントロール」論に見られるような教団の布教、教化法をめぐる議論、教団や信者の受け入れをめぐる地域社会との対立などは、これまであまり表面化してこなかった新しいパターンのコンフリクトであると思われる。こうした新しいコンフリクトがクローズアップされてきた背景として、まず欧米における「カルト」論議の高まりとその影響が考えられる。「カルト」も「マインドコントロール」も、欧米の「カルト」論議において提起された概念である。しかしそれだけでなく、そこには日本における新宗教のあり方の変化や日本社会のあり方の変化が何らかのかたちで投影されていると考えられる。それがどのような変化なのか、引き続き代表的なコンフリクトの事例の分析を通して明らかにしてゆく。
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