1999 Fiscal Year Annual Research Report
家庭の教育力の低下に対応する学校カリキュラムの開発研究
Project/Area Number |
11871044
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 全 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50004114)
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Keywords | 家庭 / 親 / 教育 / 学校 / カリキュラム |
Research Abstract |
1.「学級崩壊」の事例から析出された親の問題 学級経営を困難にしている要因のひとつとして、親が、保護者としての責任に無自覚で、子そだてに無関心であることを指摘することができる。このような要因としては、親の教育責任意識の欠落ということのほかに、教科学習の成績に至上価値をおく「わが子の幸福」至上主義ともいうべき狭隘な教育観にとらわれている親の存在も無視できない。 2.家庭教育法制の考察によって判明した必修「教育科」創設の必要性 子の監護と教育について親に権利義務を課している民法第820条の沿革を考察した結果、次のことが判明した。 1)最優先の保護者としての親(権者)に就学義務を負わせている今日の就学関係法規は、日本の近世までの親子関係を規律していた儒教的規範とは異なる、明治前期に移入した西欧の自然法論にもとづく子にたいする親の教育義務、という考え方から派生したものである。 2)日本の民法における親の教育義務規定のモデルとされたナポレオン法典を編み出したフランスの場合には、先ず、民法において親の教育義務を規定し、その約80年後に義務教育制度を設けたので、学校は親の教育義務のなかの知育義務の補完機関として位置づけられて今日にいたっている。 3)日本の場合には、フランスの場合とは逆に、はじめに学校制度と就学義務制度が整備され、その後に親の教育義務が民法によっ規定されたために、学校が体育・徳育・知育のすべてを担当することを当然視する学校観をもたらしたといえる。 4)日本の学校教育は、以上のような経緯から、子にたいする親の教育義務という意識が希薄な法的風土のなかで成り立っているので、「学級崩壊」や「いじめ」の防止にも資することになる「子を監護・教育する義務が履行できる親になるための教育」を可能にする新教科を必修の教育内容として創設する必要がある。
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