1999 Fiscal Year Annual Research Report
ホリスティックな高校教育改革の実践と構造に関する研究
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11871047
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
菊地 栄治 国立教育研究所, 教育経営研究部, 主任研究官 (10211872)
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Keywords | ホリスティック / 近代性 / 自己省察 / 高校教育改革 / 機械論的世界観 |
Research Abstract |
本研究は、高校教育改革の実践構造を歴史的・社会学的に分析しながら、「ホリスティックな高校教育改革」の可能性について、理論的・実証的な検討を加えることを目的としている。 本年度は、大阪府立松原高等学校の実践資料を丁寧に解読するとともに、あわせて参与観察と聴き取り調査を実施した。データの分析と文献のレビューから主にふたつの点が明らかになった。 第一に、これまでの高校教育改革は、制度的な構造の制約もあって、<近代性>と向き合うよりもその矛盾を増殖させたり事態をより複雑にしていく傾向が明らかとなった。これらは、政策の「意図せざる結果」である。その根源には近代的な世界観と近代的な社会装置の問題がある。機械論的世界観や制作の思想、欠乏の教育言説、操作主義的教育実践、さらには「微細な差異」を競い合うことを旨とする社会・経済システム…などである。端的に表現すれば、「生の断片化」は私たちの社会において次第に深刻な事態を招いている。 第二に、大阪府立松原高等学校の試みは、これらの「負」「闇」「しんどさ(困難さ)」といった側面と向き合い、なおかつ自己省察の回路を閉じないという点できわめて重要な歴史的意義を持つ取り組みであることが浮き彫りになった。子どもたち自身の現実に寄り添うという点で「エコロジカル」であり、身体と心を分離せず「いのち」という分割不可能な次元で子どもとかかわるという意味で「ホリスティック」な試みが展開されてきた。 次年度は、これらの実践が持つ意味と機能を卒業生調査と参与観察によって明らかにしていく。
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