1999 Fiscal Year Annual Research Report
カナダ文学における民族意識-英系・仏系両文学における対立と統合
Project/Area Number |
11871069
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小畑 精和 明治大学, 政治経済学部, 教授 (30191969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永江 敦 明治大学, 政治経済学部, 講師 (40267357)
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Keywords | 国民文学 / 多文化主義 / ナショナリズム / サバイバル / 民族のアイデンティティ / 静かな革命 / カナダ文学 / ケベック文学 |
Research Abstract |
カナダ連邦の結成(1867年)以来、カナダのアイデンティティは模索されてきた。『赤毛のアン』(1907年初版)にすでにカナダ的意識の芽生えを見ることも可能であろう。そこには、長老派を中心とした「村型」の閉鎖的社会と、そこから脱皮しようとする少女の成長が描かれていた。この物語は確かに新生国家カナダの一つのイメージを提供しているかもしれない。しかし、当時、カナダは、英系と仏系の二大文化に二分されており、特にそれを統合した「カナダ文学」と言ったものは問題にならなかった。さらに、英系の文学もまだ国民文学といえるほど成熟していなかったし、まして、仏系の文学は、量的にも質的にも未熟なものであった。 戦後民主化が進むにつれ、伝統的な「サバイバル」(アメリカ独立戦争に敗れて逃亡してきたロイヤリストの残党である英系と、植民地戦争に敗れて本国フランスに置き去りにされた仏系)精神から脱し、1960年代になると、カナダの新たなアイデンティティの探求が始まる。N.フライ、M.アトウッド、G.マルコットらはカナダ文学を本格的に研究し始め、その特性を分析し始めた。 こうした歴史を踏まえ、60年代から、今日に至るまでの流れを、英系は永江が担当して、分析を進めている。M.アトウッドからM.オンダーチェにいたるまで、いいかえれば、英系と仏系の統合の模索から、多文化主義への移行がいかに文学に反映されているかを考察している。仏系は、小畑が担当し、「静かな革命」から現代にいたるまで、ケベック・ナショナリズムの変容と文学の関係を研究している。
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[Publications] 永江敦: "オンダーチェの特異性"新日本文学. 8月号. 26-30 (1999)
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[Publications] 小畑精和: "民族のアイデンティティ"新日本文学. 8月号. 50-52 (1999)
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[Publications] 小畑精和: "ナショナリズムと文学"千年紀文学. 23号. 1 (1999)
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[Publications] 小畑精和: "オンダーチェの来日"千年紀文学. 25号(発行予定). (2000)