1999 Fiscal Year Annual Research Report
少年犯罪被害者による民事損害賠償請求訴訟の法社会学的研究 ―紛争処理論の視角から見た少年法と民事司法の調和的架橋―
Project/Area Number |
11872001
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
和田 仁孝 九州大学, 法学研究科, 教授 (80183127)
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Keywords | 少年犯罪 / 被害者 / 刑事和解 |
Research Abstract |
本年度は3ヵ年にわたる調査研究の準備段階として、次のような作業を実施した。(1)犯罪被害者をめぐる欧米の理論状況の整理と検討、(2)現行手続き・制度の問題点を把握するための関係機関・関係者へのヒアリング、(3)現行手続き・制度への評価を問う質問紙調査の第一段階として少数の対象に対するパイロット調査の実施、(4)上記ヒアリング、パイロット・サーヴェイの結果の分析・整理。 これらの作業を通じて、現行制度のもとでは、被害者側の情報へのアクセスが極めて限定されているというよく指摘されている点のほか、被害者側の情緒的葛藤への手当てがなされず、そのことで制度全般、さらには少年側への著しい報復感情が倍化されていることが理解できた。アメリカでは裁判外手続きによる刑事和解の試みが行なわれ一定の成果をあげているようであるが、これに心理的なケアのシステムをも組み込むことで、被害者側にとってはその精神的回復と敵対感情の抑制効果を、少年側にも被害者側と向き合うことで真に意味のある矯正効果を期待できる可能性があるように思われる。 このほか、被害者側には経済的損失も大きい場合があり、少年側の賠償能力も多くは期待できないことから、現在の被害者救済制度のレベルをはるかに超えて、なんらかの公的な手当ての更なる充実が必要である。 こうした点から、一方で公的な手当てを充実しつつ、他方で当事者主義的な手続き・制度を構築していく方向へのニーズが明らかに存在するといえよう。 次年度は、この点をより詳細に検討すべく、本格的な質問紙調査とインテンシブなインタビュー調査を実施していく予定である。
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