1999 Fiscal Year Annual Research Report
日本の訴訟手続の事実認定における言語運用実態と言語学的分析方法導入に関する研究
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11872006
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
大河原 眞美 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40233051)
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Keywords | 訴訟手続 / 事実認定 / 言語運用実態 / 言語学的分析 / 法言語学 |
Research Abstract |
平成11年度の研究では、英語圏の法言語学と日本の法医学の実情把握と、最高裁判所と警察の科学捜査研究所の鑑定方法についての情報・資料収集に努めた。英語圏の法言語学に関しては、アメリカではホワイト弁護士から民族的少数派のモン族の青年の警察官侮辱事件を始めとする英語の理解度が争点となった事件、ソラン準教授から商標事件の判例、デュマズ準教授からメキシコ人被告の通訳問題等について、オーストラリアではギボンズ博士から商標類似事件の音声学からの判定や、シンプソン博士の意味論による分析方法、イギリスではクサード博士の法談話分析方法について指導頂いた。第4回国際法言語学学会で「スナックシャネル事件」の商標シャネルの社会言語学的分折を発表し、分析方法について多くのコメントを頂いた。同学会では、言語学的分析の鑑定採用における問題点についての多くの発表を聞くことが出来、大変参考になった。日本の最高裁判所では、鑑定よりも法廷通訳関連の資料を入手した。科学捜査研究所では、鑑定領域(法医、化学、物理、心理)と各々の方法について学んだ。最後に、音声関係の鑑定を行っている日本音響研究所の活動内容も把握した。実情把握以外では、英語圏を中心とする法言語学関連の書籍、日本の法医学鑑定の基礎図書等の文献を収集した。 法言語学が確立している英語圏でも言語学分析が法廷で採用されないことが少なくない。言語学は多岐に渡る学際領域でもあるため、固有の研究者の言語観の依存度の高い方法論は主観的という判断を受け易い。このため、科学的で誰が行っても同じ結果が出る音声分析が鑑定として広く採用されてきた。しかし、談話分析、文章解読など音声学で処埋出来ない言語領域も事実認定において重用である。平成12年度研究では、言語が争点あるいは関与した判例からその分析方法を整理し、司法関係機関における法言語学の実態調査を行いたい。
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