1999 Fiscal Year Annual Research Report
「認識上の不協和」モデルによるNPOと労働市場の分析
Project/Area Number |
11873007
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
中込 正樹 青山学院大学, 経済学部, 教授 (30137020)
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Keywords | 非営利組織 / 価値の守護神 / 市民 / 市民社会 / 認識論 / 公共財 |
Research Abstract |
この研究の主目的は、非営利組織(NPO)を、認識論的な分析視点から新しく捉え直し、マクロ経済に及ぼすその「意味論的」影響を明らかにするものである。本年度(1999年度)では、従来の経済学的アプローチが有する理論的問題点を明らかにするとともに、その問題点を解消しながら新しい分析的アプローチを、具体的にいかに構成していくかを考察した。その成果は、とりあえず、裏面に示した「意味世界のマクロ経済学」という出版予定の著作の第14章、第15章として、発表したいと考えている。明らかになった研究内容の概略は、整理して述べると、次のようになる。 1.まず非営利組織の経済社会活動に参加する人間像を、従来の経済学が考えてきた「合理的経済人」というパラダイムから区別し、新たに公共性をも認識する「市民」というミクロ経済学的基礎を理論的に整備する方法論を展開する。 2.次にこの公共性を認識する「市民社会」において、公共財をいかに認識論的に定義するかを分析する。従来の経済学が、公共財の「非競合性」「非排他性」の性質を、財そのものが有する「物質的性質」として理解するのに対して、認識論的アプローチでは、市民の認識的変化によって、この性質が「内生的」に形成されることを明らかにする。 3.こうした公共財を供給する認識論的主体として、非営利組織(NPO)を分析する。ここでは単に物質的次元のみで、財サービスを供給することが問われるのではなく、こうした供給活動を通じて、市民社会的「価値観の陶冶」がいかに行われているのか、この点が基本的問題となる。私は、前著(「フラクタル社会の経済学」)で展開した意味論的アプローチを出発点としながら、この非営利組織が市民社会の中でもつ認識論的意義、つまり「価値の守護神」(ソロモン)としての機能を、明らかにしていきたいと考えた。
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