1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11874033
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 泉 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40154744)
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Keywords | 曲げエネルギー / 平均曲率 / 赤血球 / 変分法 / 安定性 |
Research Abstract |
赤血球の形状は,静止した血漿中では,与えられた表面積と体積をもつ閉曲面の中で曲げエネルギーを最小にする閉曲面となると考えられている.曲げエネルギーは各点の平均曲率から自発的曲率と呼ばれる定数を引いたものを平行して曲面全体にわたって積分したものである.本研究は(A)このような閉曲面を厳密に構成すること,(B)その安定性を考察すること,(C)静止していない血漿中の赤血球の運動,更に壁に接触した場合の赤血球膜の受ける変形のモデル化を目指すものである. 本年度は,長澤壯之(東北大学)の協力を得て,(A),(B)を中心に取り組み,幾つかのことを証明した:(i)表面積と体積が球面のそれに近いとき,球面の近くに曲げエネルギー汎函数の臨界点(回転閉曲面)が存在することは知られていたが,それらの安定性を考察し,モードが2のもの以外は不安定であることを示し,その不安定指数を評価した.更に,モード2の解は自発的曲率の大きさによって縦長の曲面の方が安定で横長のものが不安定である場合と,その逆の場合が起こり得ることを証明した.これらは球面に近い閉曲面の範囲での考察であるが、球面から離れた曲面を厳密に求めることは非常に難しいので,数値的に求めることを計画し,プログラムを作成した.浸透圧差をパラメータとして,これに関して大域的に解の枝を追跡する予定であるが,予備的な計算の段階でも,初期値やパラメータに対して解が単調に依存する場合があるなど,これまで知られていなかったことを発見した.このことに着目すると,球面とは種数の異なるトーラス状の曲面の中での解を厳密に構成することが可能であるように予想している. (C)については梅田民樹(神戸商船大学)の協力のもとで予備的考察を始め,今年度は問題点の洗い出しを行ない,今後の方針をいくつか検討した.
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