1999 Fiscal Year Annual Research Report
強弾性結晶内の孤立ドメイン境界が示す1次元運動における断続性の精密測定
Project/Area Number |
11874043
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川端 和重 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20261274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三本木 孝 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60000791)
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Keywords | 強弾性 / 境界面 / ドメイン / 運動 / 断続性 / 有機結晶 |
Research Abstract |
有機単結晶(TMTSF)_2Xは外力の下で孤立した双晶境界を生じ、その運動がリアルタイムで観察できることを私たちは見いだし、その運動を詳細に調べている。本研究では、特に、この観察から発見した一定応力下における運動の断続性に焦点を当て、その起源を明らかにするために、一旦停止時間の性質を調べた。以下に主な結果を記す。 1)一旦停止は結晶内に固定された場所において起こる。このため、結晶内の欠陥や転位などの格子系に固定した乱れが起源と考えられる。2)外的条件(応力、温度、待機時間)を一定に制御して繰り返し実験を行うと、一旦停止がおこる直前の局所的速度は一定であるにも関わらず、その直後の停止時間は100倍以上も揺らぐ。局所的な速度が一定であることは、この結晶の外的環境が一定であることを保証していることから、一旦停止の時間は運動とは異なる支配要因によるものであるといえる。すなわち、一旦停止状態は単純に速度の遅い極限状態ではないといえる。3)揺らいだ停止時間の平均植は応力、待機時間とともに速度と同様の依存性を示す。このことから、停止時間は運動状態と同様の外力による影響を受けているといえる。4)停止時間のゆらぎは対数正規分布をしており、その分布関数は応力及ぴ待機時間には依存せず一定であった。 これらの結果から、結晶内に固定したピンニングセンターにおいて境界は停止し、熱励起によってこのポテンシャルを乗り越えて運動を再開すると考えられる。このピンニングポテンシャルは、境界の反対方向の運動によって平均値の回りに揺らぎ、その結果として停止時間が対数正規分布で揺らぐことが理解できる。ただし、ピンニングポテンシャルの実体および揺らぐメカニズム、およびその揺らぎが外力によって不変である理由については境界に関するミクロな情報を得る研究が必要である。
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[Publications] M.Mukoujima: "Dynamics of isolated twin boundary in (TMTSF)_2PF_6"European Physical Journal. B7. 365-369 (1999)
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[Publications] K.Kawabata: "Dynamics of Isolated twin boundary in Organic Bechagaard Salt Crystal and long-time relaxation of its mobility"Slow dynamics in Complex systems. CP469. 675-676 (1999)