1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11874069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大路 樹生 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50160487)
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Keywords | 軟体動物 / 殻 / 破片化 / 捕食 / 古生態 |
Research Abstract |
破片化した貝殻層の成因と生物的な殻破壊の程度を知るために,以下の調査を行った. 1.西表島船浦湾,浦内川河口域のマングローブ干潟で,大型の殻を持つヒルギシジミ(Geloina spp.)の殻がどの程度生物的な破壊を受けているかを観察した.どの地点でも中程度(数 cm)の殻が最も破壊を受けており,より大型の殻は破壊を受けていない.また,殻の破壊されるパターンに特徴があり,その後縁部がより高い頻度で割れている.さらに表面には破壊者が付けたと思われる擦痕が多数残されている.マングローブ干潟が大型のガザミ類であるノコギリガザミの生息地であることを考えると,ヒルギシジミの主な捕食者はノコギリガザミである可能性が強く,これがヒルギシジミに大きな捕食圧をかけていることが予想される. 2.日本の中生代・新生代の二枚貝・巻貝を多数含む貝殻層のデータをコンパイルし,これらにどの程度破片化した貝殻が含まれているかを検討した.その結果,千葉県房総の第四系には,下総層群地蔵堂層,藪層,上泉層など,破片化した二枚貝・巻貝殻が多数含まれる層準が存在し,その中でも種類による殻の破壊程度が異なることが分かった.これは、捕食者が獲物の種類を選んで殻を破壊していたことを示唆する.ところが中生代の貝殻層には,摩滅したものを除けば,破壊した殻はほとんど見られない.このことから,殻の破壊においては波浪のような物理的な要因によるものはほとんどなく,生物的な破壊が新生代に入ってから顕著になったことが考えられる. これらの研究結果の一部は,2000年1月に行われた日本古生物学会の特別講演で紹介した.
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