Research Abstract |
昨年度は西表島の亜熱帯性干潟環境における捕食-被食関係の観察を中心に研究を行い,二枚貝や巻貝にとってこれらの殻を割る動物達が大きな捕食圧を与えていることを認識したが,今年度は中生代-新生代の浅海性化石層を中心に調査し,破片化した貝殻の有無,その頻度,破片化した貝類の種類,そして捕食者と考えられる種の存在に関して調査した. 白亜紀の例としては,北海道蝦夷層群,根室層群,福島県双葉層群,熊本県御所浦層群の調査を行い,双葉層群芦沢層の2産地において,破片化貝殻を確認したが,他の白亜系からは全く確認できなかった.古第三紀の例では,北海道根室層群,釧路層群,アメリカバージニア州南部のポトマック層群,長崎県西彼杵層群,佐賀県杵島層群において調査を行い,根室層群の例を除いて,いずれにおいても破片化貝殻を確認したが,その程度は大きくない場合が多い.新第三紀・第四紀の例では,中新世の富山県八尾層群,岐阜県瑞浪層群,静岡県掛川層群を調査し,瑞浪層群を除いて著しく破片化した貝殻層を確認した.以上の化石貝殻層の出現から,破片化は白亜紀にはほとんど存在しないが,古第三紀以降,徐々に著しくなったと解釈される. 一方,現生の貝殻にどのような捕食による破壊が見られるのかを千葉県木更津の干潟,および実験室の水槽実験(捕食者:カラッパ,被食者:アサリ,キサゴ,ダンベイキサゴ,シオフキ,バカガイ,シッタカ等)を行い,その捕食痕の特徴を化石貝殻の破片と比較し,化石の例からの捕食者の特定を目指す. さらに,亜熱帯の浅海性の地層から産するヒルギシジミとノコギリガザミの捕食-被食関係にエスカレーションがあるかどうか.中新世に現在と同じ捕食-被食関係があることが確認された.双方のサイズに大きな変化は見られず,1500万年間にエスカレーションはないことが明らかになった.
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